後半は、殆ど「鉄腕アトム」に割かれています。
この本でアニメのことを少し学ぶことができましたが、「鉄腕アトム」はアニメーションの歴史の中では画期的な発明によって作られた作品だったのだそうです。
ディズニー映画の豪華なフルアニメーションというのがあって、この制作費は膨大なものになります。
当時日本のTVはアメリカからの輸入アニメが人気でした。リミテッド・アニメと呼ばれていて、簡略化した作品です。これでもかなりの制作費と製作日数を要します。
手塚治虫率いる虫プロのアニメーター達は、リミテッド・アニメを改良して、テレビアニメという新しいメディアを作り出しました。それは、毎週30分の番組を26週間続けるという契約をこなすために生み出されたものです。
そこには、手塚治虫氏の、天才漫画家ならではのアイデアが込められています。それは、逆転の発想で、絵を動かすアニメから、動かさないアニメにすることでした。そして、小説並みのストーリーを与えます。
そして生まれた「鉄腕アトム」は怪物並みの存在になってゆきます。アメリカでも大人気を博し、版権ビジネスが生まれ、日本にTVアニメブームを呼び込みます。
しかし、「鉄腕アトム」を生み出すために、虫プロ社員達は、殺人的ともいえる過重労働に耐えることになります。
手塚治虫さんは、日本史上における巨星であるのは間違いないでしょう。漫画の連載も超人的にこなし、さらに虫プロを作ってアニメ制作まで行うという物凄い量の仕事をこなします。
何故それほどまで、と度々思うのですが、この大天才には、描きたいものが余りにも多くて、あれもこれも全部やりたい、と望んだのではないかと思います。もっと時間をかけて、というのは凡才の発想なのでしょう。天才がここまで知恵とアイデアを搾り出すことによって、あの偉大な作品群が生まれたのだと思います。
しかし、手塚治虫さんは経営者に向いていないことは随所に感じられます。
ホンダにしてもソニーにしても天才発明家と実直な経営者というコンビで偉大な企業になりました。
その後の虫プロのことを思うと残念な気がします。
今も大人気で世界に誇る日本文化・TVアニメが生み出される瞬間を追体験する素晴らしい本でした。