「土佐のいごっそう」とは頑固、偏屈、負けず嫌い。「薩摩のぼっけもん」とは、乱暴者で、かつ放胆な輩。「肥後もっこす」とは、やはり頑固者とか守旧主義の意味。そして「水戸っぽ」とは、理屈っぽく、観念的な人間のこと。いずれも戦国から江戸時代にかけて、その地を治めた殿様(藩)の士風が浸透して生まれた言葉である。一方で、「井伊の赤備え」といわれた精悍な士風(彦根藩)が、幕末には「茶歌凡侍」と笑われるようになった例もある。また、各地の士風はその地勢によって育まれたケースも多い。黒潮の影響で投機的気分を持つ和歌山人、畿内にとっての戦略的要衝である福井藩が持つ現実感覚などが代表例だ。本書は、歴史小説の第一人者が、日本各地に残る「士風」が生まれた由来やエピソードを綴った歴史紀行である。登場するまち(藩)は18だが、いずれも歴史に名を残す人物を生み出したところばかりで、読み応えのある人物評伝にもなっている。
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