この本のサブタイトルに、「地域の力を引き出す手法の宝庫、分権の国欧州」とあるが、この本を読み進めるとそのことがよく納得できる。
欧州がEUに統合され,その影響は地方自治体の現場にまで及び、超国家の統合の動きは逆にローカルな地域主義の動きを誘発している。
著者は、「グローバルな動きの中で地域が力をつけないとグローバリゼーションの中に埋没しかねない」、との観察眼で欧州の「地方自治を強化する動き」をフォローしているが、この本により地域再生、教育、福祉、公共交通、地方財政などの面でその具体的な動きが手に取るように分かる。
わが国でも、地方分権の動きはあるものの、三位一体改革までの地方分権の動きは、必ずしもダイナミックとは言えない。著者は豊富な国内経験のバックグラウンドをもとに彼の地と我が国の制度と運用の実態を比較し、わが国の制度の在り方にも大いに参考になる視点を具体的に提示している。
現在、世界同時経済危機の最中にあって日本経済、更には地域経済は大きな混乱状態にある。当面の経済対策による対応と並行して、じっくりと将来を見据えた地域再生の在り方、日本を元気にする構造改革の在り方についても考えていく必要があるが、この本に書かれている視座は、その行方を指し示すものとなっているように思われる。
著者は、地方から優秀な人材を東京に送り出す「出稼ぎシステム」からの脱却を訴えている。ケンブリッジ滞在経験のある藤原正彦氏に自らをやつした著者にとっての「遥かなるロンドン」の成果物を是非お勧めしたい。