SF作家でもある筒井康隆の初期パニック短編集です。
1970年代に書かれたものが主なので、現在の視点から見ると、
若干、違和感や古い感じも否めませんが、逆に当時の時代背景を鑑みることも出来、
たっぷり楽しめます。
表題作の『日本以外全部沈没』は、言わずと知れた小松左京の『日本沈没』へのオマージュで、
日本以外の国が全部沈没して、狭い島国の日本に、諸外国から大勢の外国人が押し寄せるという内容。
当時の政治家や著名人が、とあるバーにひしめきあい、それぞれの主義主張を
繰り広げたりするんですが、最後の大オチまでテンポの落ちない快作です。
この他にも、関西風未知との遭遇を描いた『ヒノマル酒場』。
当時の農協の厚顔無恥ぶりをパロディーにした『農協月へ行く』。
60年代の学生闘争に対するアンチテーゼの、『新宿祭』の『日本列島七曲り』
など、どれも短くとも読み応えのある作品ばかりです。
また、どの作品もパニックをテーマにしていますが、
そーゆー局面におかれた人間の醜い本性のようなものを描きつつ、陰鬱にならないように
スラップスティックなラストで昇華させていて、読後もサッパリとした感想を持てます。
今の日本が出来上がった背景なんかも想像できたりして、楽しみ方が膨らむ本です。