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日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声
 
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日本人は何を捨ててきたのか: 思想家・鶴見俊輔の肉声 [単行本]

鶴見 俊輔 , 関川 夏央
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

明治に造られた「日本という樽の船」は、よくできた「樽」だったが、やがて「個人」を閉じ込める「檻」になりかわった。二一世紀の海をゆく「船」はあるのか?

内容(「BOOK」データベースより)

19世紀後半、私たちの先輩は、世界を航行するため「日本という樽の船」をつくった。それはよくできた「樽」だった。しかし、やがて日本人の「個人」を閉じ込める「檻」になりかわった。では、21世紀の海をゆく「船」は?3・11以後を私たちはどう生きるか―。

登録情報

  • 単行本: 285ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2011/8/8)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4480857974
  • ISBN-13: 978-4480857972
  • 発売日: 2011/8/8
  • 商品の寸法: 19 x 13.2 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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By 茶々丸 VINE™ メンバー
 鶴見俊輔ほど誤解を受けやすい思索家も珍しい。そして彼の対立軸として引用されるのは丸山眞男がその殆どでもある。がしかし内実を見れば鶴見と丸山が本質的に対立しているとの要素を見いだすことも困難である。
 今回出版されたこの本で注目したのは「日本人の心“一番病”」そして「名刺」の話だった。「一番病」に象徴されるのは明治維新以降の日本のあり方、それもアジアの中での日本のスタンスのことであり、この辺りは丸山の認識と何らの変わりはない。むしろ丸山よりも過激とも感じられる表記すら見られる。そして敗戦後の日本が新たな目標と見定めたのはアメリカだった。丸山が比較対象の相手として意識していたヨーロッパとは異なり、一つの陸塊であるにもかかわらずその広大な国土ゆえに供給と需要を「内部で」満たすには十分な余地もある。それが逆にアメリカ自身の過信もしくは誤解を招く原因ともなったことを鶴見は見抜いている。ベトナム戦争当時、鶴見は自らが加わるベ平連の中にあって「この戦争の意味」を問いその無意味さを訴え続けてきた。では何が彼をそうさせたのか。「一番病」に取り憑かれた者の未来に待ち受ける自滅とその悪夢が彼の頭をよぎっていたこともこの本の端々からうかがい知る事ができる。
 そして「名刺」の話。これほど痛烈に日本社会が抱える病気を言い当てている問題を正面から採り上げている話も近年では珍しい。名刺には肩書きが記されている。しかしながらその名刺が通用するのは会社と会社の間、会社内部での関係でしかありえない。ひとたびプライベートな場になれば名刺など通用しない。一人の「個人」でしかない。にもかかわらず、肩書きが通用する日本独特の社会が意味するモノとその背景にある意識そして両者のもたれ合いなどは形を変えた日本の中世社会に見られる「院政」の姿に重なって見える。
 80年代半ばの「超整理」などに始まる現代の「断舎離ブーム」にあって「残すべきモノ」と「捨ててもよいモノ」そして「捨てるべきモノ」の境界線が磨りガラスを通して見える物のように朧気になる中で、鶴見俊輔の言葉が語る意味は重い。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By sennotaba トップ500レビュアー
戦争も歴史も文学も哲学もよく知らない私だが、凄く面白かった。
日本の内側からも外側からも眺めた経験を持ち、戦前・戦中・戦後・そして現代を生きる鶴見さんの眼差しの強靭さ、透徹した言葉に圧倒された。

官僚的思考・皮相的自己認識など批判を込めて語るものもあるが、それよりも「えらいね」「凄いんだ」と鶴見さんが語る物事や人物たちの魅力的なことに感嘆を覚えた。
「イイ話」を取り出してお手軽に語るのではなく、時代の流れや人の関わりを交えて、今は歴史となった対象の「在り方」全てを語るやり方に深く腑に落ちるものを感じた。
「今」という「点」では結論を出せない。200年くらいの時間のうねり、その中にある世界まるごと(社会やひとびと)をひとつのカメラに収めた時に、何かを評価できるのではないか、という様な事をおっしゃっていました。

今年内に革命を起こさなければいけない、というような思想も借り物の皮を被ったのっぺらぼう。
己の持ち物をしかと見つめ、活かし(負の遺産もまた真理を指すコンパスになる)ていけば未来はあると。
その為にはまず、己自身と日本の持つ財産を歴史と現代社会から見出さねばならない。

……私のようなボンヤリした人間でも、鶴見さんが言い連ねる言葉の中に、己の実生活と重ねて見出すものがあり、日本と自分に対する認識がガラリと変わりました。
鶴見視点で見ると、自分の周りにある様々な断片が、どんどん結びつき繋がりあって、意味のある形を作りつつあります。
それがとても嬉しい。
多くの方に読んで欲しい本です。

思想家・哲学者・文学者・政治家・批評家…専門家達について語られても、専門的な話に終始せず、その方の生い立ちから成した仕事まで人生まるごと語るやり方で素人にも理解が深まるようになっていました。
また専門家達の話に混じって「寄生獣」や「ぼのぼの」、対話者・関川夏生さん原作の「坊ちゃんの時代」などのマンガなど、鶴見さんの見つめる対象は縦横無尽。
対談集ですし、語り口は易しく、まったく知識の無い私のような人間でも愉しく読めました。
ぜひ一度、お手に取ってみて下さい。
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3.11によって明治以降の近代日本そのものが、全否定されたのではない。

否定されたのは常に一番を目指すことを余儀なくされた「樽船」の中での肩書きを刷った名刺を振り回していた日本人であり、数は少なくとも「個」の力で世界に向き合った多くのたくましき近代日本人のエピソードが、この対談集には、次々出てくる。

長州藩でも身分の低かった伊藤博文は、肥だめを担いで野菜を作っていた。船に乗ってイギリスに渡る時も水夫の手伝いをし、料理を作ったりしていたが、到着と同時に長州がイギリスと戦争を始めたと聞いてとんぼ返り。旧知のイギリス外交官アーネスト・サトウが煙の残る下関に降り立つと、若き伊藤が下関中を駆け回り集めた材料で洋食を作り、饗応したそうだ。

そういう人がヨーロッパ列国の首相の間に立ったとき自ずから別の風格が出て、見る人はわかる。

今の日本に必要なのは、「個」の力で、すくっと立ち上がれるたくましき「敗北力」を持った人ということになりそう。この本は、手元に置いて年を重ねるにつれまたページを開きたい。鶴見俊輔という同時代人を得たことを感謝したいと思う。

一読しおえた今は、無性に藤沢周平を読みたくなっている。
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