加藤周一他の名著『日本人の死生観』は正直難解でしたが、この本は、親しみやすい題名と裏腹に、「日本人の死生観」を明快にまとめ論じた新たな名著です。
冒頭のまえがきで、父にがん告知しないまま、「大丈夫、治るよ」と言い続けて見送った心のわだかまりを著者が書いています。それを読んで、「この著者は決して学者ぶって上から小難しく書こうとはしない、逆に、市民目線でわかりやすく率直に語りかけてくれそうだ。」と感じました。そして、その予感以上に、率直で簡明な内容でした。
もちろん、内容はやさしくはありません。万葉集や源氏、平家、親鸞や明恵、良寛や宣長、ルターやユング、賢治や中也、九鬼周造に丸山真男、といった、日本古典や宗教、古今東西の哲学者・文学者の作品や思想が引用されますので、一般常識は要求されますが、逆にある程度知っている引用に対しては、その論の的確さも引用の適切さも「切れ」、も楽しめます。
この本は、内容から題名をつければ「日本人の死生観」がふさわしいと思います。けれども、それでもこのように命名した著者は素晴らしいし、正解だったと思います。なぜかは、本文を読んで感じ取って欲しいし、きっと同様の感想を持つ人は少なくないように思います。