積年の苗字調査研究が「日本苗字大辞典」全三巻を生んだ。その過程で見えてきた苗字の歴史、変遷が本書にまとめられている。誕生した苗字ー古代。整理された苗字ー奈良〜平安期。枝分かれした苗字・散らばった苗字−鎌倉〜戦国期。封印された苗字ー室町〜江戸期。作られた苗字ー苗字ー明治期。進化する苗字ー昭和〜平成期。うまくまとめられた苗字の変遷の様態がそれぞれに読み応えがある。
代表的に一つだけ例示すると、日本人に最も多い「スズキ」とはいったい何か?
鈴木姓は人口約80万人。元の起こりの豪族の氏からすれば「穂積」。これは紀州国の熊野神社に古くから続く神官の家柄である。「穂積」とは稲束の中心に一本棒を立てる、それがスズキである。この棒は稲魂を呼ぶ「依り代」で、棒を伝わって稲魂は稲に入來する。したがってこの木は「聖なる木」…熊野の方言でスズキとなる。今は「鈴木」の字を主として当てているが、40以上のスズキの書き方がある。なくてはならない貴重な、めでたい存在の「スズキ(鈴木)」は明治になって苗字を名乗るのを許された一般人は我先にとこの憧れの姓を名乗るようになった。
このように日本の歴史・民俗等に関連して苗字の変遷史を縦軸に捉えて学問的な「苗字学」である。平成18年亡くなられた著者丹羽基二氏のお「墓」に合掌して擱筆。