医師としてたくさんの高齢者とその家族に接する中で、著者自身の心の中に沸いてくるとも言える’問い’を、長生きと必ず訪れる臨終に焦点を当てて書いています
はじめにの中で
「本書は、長生きの良くない面にスポットを当てています。だから、基本的にはいやなことを書いています。なぜそんないやなことを書くかというと、ちまたにあふれる健康長寿情報にはあまりにウソが多いからです。そんなきれい事ばかりを聞かされていたら、この先どうなるのか。ますます老いや長生きが苦しくなってしまう。その危機感が強くあります」
とあるように、あまり語られることのない視点から本全体を構成させています。特に有料老人ホームの「影」(闇ではなく)の部分を事実を元に、今後おきうる問題を提起しているくだりは、現場の医師ではないと伝わらない重みを感じました。この本では主治医の判断を超えて、経営者の判断が優先される問題を指摘していますが、私自身も有料老人ホームは、今後数年のうちに社会問題化しないかと心配しています。
200頁で8章構成ですから、やや一つ一つが物足りない感じは受けます。また、厳密な意味での検証がなされていない(または、引用文献を示していない)点は気になりますが、老人医療・介護・福祉の理想論に対して、少し立ち止まって考えてみたいという人に特にお勧めです。