韓国のKBSドラマを見て気になるのは、女性の座り方。大半が、片膝を立てて座ります。最初は違和感がありました。それでもいつの間にか、片膝座りにも、品のあるのと無いのとがあるのが判る程に慣れてきました。日本でも、能の僧侶役は、片膝を立てて座ります。左の片膝を立て、腰は右足の踵の上に乗せて坐ります。高位の僧でもこの坐り方をするので、当時は正式な形とみられていたようです。
著者によると、片膝座りだけでなく、昔は様々な座り方があった。菱川師宣や宮川長春など、浮世絵師達が描いた廓内の男女の坐り方、また古くは「春日権現絵巻」や「法然上人絵伝」など絵巻物に見られる武人や僧侶、公家、などの座り方。これらに残された図像から、昔の日本人の様々な坐り方を探っています。それに反するように、今でも芸道だけでなく、一般社会にもある考え、「正しい座り方は、正座だけだ」という通念が、全国的にいつ始まり、どう普及していったのか。それを解明するのが本書の主題の一つです。
床に座る時の日本人の多様な座り方を、まとめ、類型化し分類するのがもう一つの主題です。多様で区分が難しい座り方をイラストで説明しているので、良く判ります。しかし面白かったのは、毎日が坐る生活だった時代に、使われていた坐具の話。戸外で踵の上に坐る時に有用だった下駄。何処でも、和歌が心に浮かんだ時にすぐ書きとめられる机代わりの立膝。袴をはくとき時に、腰に巻く腰を保護していた腰板。正座以外の座り方をしても、乱れが見えない身幅の広い着物や袴の効用。畏まっていない時に、崩したり、寛いだりして座るためには、こんな小道具が必要のようです。昔の日本人は、足首や関節、骨盤周りが、すごく柔軟だったことが、写真から判るそうです。現代の我々が、膝を痛めずに、どうすれば正座できるのか。具体的な準備運動のノウハウを、聞けたらもっとよかったのにと思いました。