「戦略思考が出来ない日本人」というのは、世界の政治家・外交官や知識人の常識らしい。このことが日本の置かれている政治的混乱や相次ぐ外交の失策だけでなく、日本経済の「没落」にも深く関わっているとなれば、「戦略思考」が国家の命運を握る時代になったといえる。
本書は、外交官として冷戦時・冷戦後の各国の無謀な戦争を目撃し、また外務省でインテリジェンス部門にあった著者が、戦略論と歴史を深く学び直して、日本外交への問題提起を行ったものである。孫子やトゥキュディデスをはじめ、古今東西の戦略書を踏まえ、現在はいかに戦争を避けるか、に国を挙げて知恵を絞るべきだとし、その観点から日本外交の今後のあり方への提言を行っている。
普天間問題では、外務省・防衛省とマスコミが「日米同盟の危機」を煽り、結果として鳩山政権が崩壊した。本書を読めば、この問題が日米関係の一部にしか過ぎず、危機を煽るのは従来の日本の対米従属から利益を得ている人々であることがよく分かる。本書の内容の十分の一でも、日米同盟がどういうものか、マスコミが報道すれば、世論は全く別の方向に向かったかもしれない。近い将来、アメリカのGDPを抜くことが予想される中国との付き合い方も参考になる。
あまたある戦略論に関する本の中で、対米従属を脱却する方法を示唆している本書は白眉の内容である。また、マスコミに蔓延している「俗論」を見抜くのに本書は役立つ。戦略関連の多くの推薦書も非常に参考になる。日本の将来を憂うる人にはお奨めの本である。