故山本氏の30年前の論文を刊行したもの。日本における組織を論じたものだが、現時点での刊行は社会保険庁の不祥事に合わせたものだろう。
本書では日本の組織を西洋のそれと比較して論じている。西洋においては神との"契約"が生活の基盤(糧)となっており、それに基づいて社会は契約で成り立っている。これは民間会社や役所も同様で、定められた契約(ルール)に基づいて仕事が行なわれる。誰が何をなすべきか、誰に責任があるか明確化されている。一方、日本においては絶対神というものはなく、山や森を神とする、いわば自然信仰である。人々が気を使うのは、ムラ社会で如何にして除け者にされないかであり、いわゆる"なあなあ"の関係が重視される。著者はこれを「家族的組織」と呼ぶ。まさに社会保険庁の世界である。問題を起こした食肉業者もまさしくこの典型であろう。顧客の事より身内優先なのだ。果たして社会保険庁に国民に対する"顧客意識"があったろうか。無かっただろう。嘆かわしい。
本書では、日本の組織を改善するキーワードとして「トサフィスト」を挙げている。トサフィストとは、写本等に注釈を書き込んだ中世ユダヤ教徒を指す。「家族的組織」において、内側から常に注意を喚起するという意図であろう。30年前の知見に富んだ良書。