本書に出てくる「まるドメ」とは、「まるっきりのドメスティック(内向きで国内のことしか考えない連中)」の意味で、貿易交渉を取材するジュネーブ特派員たちが日本から来る役人や政治家を呼ぶ時に使っていた言葉だという。著者がジュネーブ特派員だったのは30年ほど前のことだが、21世紀の今もこの国は、まるドメ発想の政治によって多くの国益が損なわれている。
TPP反対論しかり、中途半端な規制緩和(実態は規制温存)しかり、無意味な農業保護策しかり。本書は、まるドメ政治とそれを支える既得権益勢力の限界を話し言葉で分かりやすく教えてくれる。特に国際競争力が弱まった国内養蚕業を過剰に保護し続けた結果、西陣などの絹織物産業全体が衰退した事実は示唆に富む。まるドメ農政に従わないコメ農家に、一度は将来がないと出て行った跡継ぎが嫁を連れて戻ってきたエピソードも日本農政の矛盾を象徴している。
日本の歴史を知らずに政治は語れないと説く著者こそ「まるドメ」ではと思われるかもしれないが、「立派な国際人は皆、立派な愛国者である」という言葉が、著者の視点・立場をよく表していると思う。
なお、本書は現役の松下政経塾生向けの特別講義を収録したということなので、できれば講義を受けた塾生がどう感じたのかも個人的には知りたかった。それがない分、星一つ減らした。