本書は、日本社会分析の名著「人間を幸福にしない日本というシステム」の著者カレル・ヴァン・ウォルフレンの新著である。
この書の視点は、1989年の冷戦終結後、世界の覇権国家として躍り出たアメリカという国家の歴史的役割について、ふたつの代表的な書を批判検討し、覇権国家アメリカの歴史からの後退を予見し、歴史認識に変更を迫る意欲的な論考だ。
批判する書のひとつは、冷戦後アメリカの世界が歴史的な役割を担うとしたフランシス・フクシマの著作「歴史の終わり」(1992)。もうひとつは、西洋文明と他の文明の対立を不可避と分析したサミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」(1998)の世界観である。
著者は、ふたつの書を批判し、覇権国家アメリカの終焉を説明する。と同時にアメリカという色眼鏡で世界を見る日本人の世界認識に変更を迫る提案でもある。
何年か後に、このウォルフレンの最新著「日本人だけが知らないアメリカ『世界支配』の終わり」は、21世紀の新たな世界秩序を予見した歴史的名著として評価される可能性がある。この著作は、20世紀の覇権国アメリカの時代の終焉を見通し、新たな世界秩序のコンセプトの胎動を知らせる書だ。
その根拠の第一に、この著が、世界経済にブリックス(ブラジル、ロシア、インド、中国を指す)の躍進という強烈な風が吹いていることを強く意識しつつ書かれている点だ。
根拠の第二は、アメリカの一極支配に、ヨーロッパという古い枠組みを「EU」と、衣更えをして、形成されつつある存在があることだ。
最後の根拠の第三は、21世紀に大国化すると予想されている「中国」への歴史認識の確かさだ。
世界経済構造が、劇的に変化している時、日米関係を大切にしておけば、日本の政治経済は安泰だ、という発想は、明らかに竜宮城から帰ってきた「浦島太郎」のイメージしかないことになる。日本人には、発想の歴史的大転換が必要だ!!