内容的に全く申し分なく、よく書かれた本だと思う。比較的若い世代からこうした執筆を行える論者が出てきたことも評価できる。一度読んで「もう終わり」ではなく、何度も読み返したい重厚な内容である。しかし、それだけに、本書の中に全く引用・参考文献が記されていないのはいただけない。このままでは、筆者が魂を込めた主張や事実関係に信憑性が出てこないからだ。本文中に出典が記されているところもあるが、それだけでは少なすぎる。多少なりともアカデミックなものなら、新書版でさえ巻末又は章末に記されているし、記されるのが当然だろう。確かに600頁近い大著であり、参考文献などを加えれば、幾ら小さいフォントにしても更に厚くなったかも知れない。しかし、それは参考文献を省略する理由にはならないし、世界には通用しないし、書籍販売上も障害にはならないと確信する。もし出典が記されていれば、国内のみならず外国における反日的論評に対しても、一市民でも堂々と反駁できる(要すれば出典をたどって「ここに証拠がある」と言い返せるから)だろう。本書自体を、翻訳出版しても外国での需要はあると思う。しかし、現状のままではこれらは全く不可能である、なぜなら証拠に欠けるからだ。本書はエッセイやジャーナリストの見聞録ではなく、れっきとした学術本であり戦略本である。著者同様に日本の将来を考えれば考える者ほど、論拠を強く求めるということを肝に銘じてもらい、改訂の機会があれば、是非巻末にでも出典を加えて欲しい。何でもかんでも出典を書けというのではない。一般的な学術論文の如く、一般読者には余り知られていない「○○が△△と言った/提言した。」という記述には出典を付け、何処にその証拠があるのか示せば言いのである。学術論文を書いたつもりで、再度最初から点検し直して欲しい。そうしなければ、著者が文中で時折使用している「アホダラ経」と逆になじられてもこちらも証拠がないから言い返せないではないか。本書を高く評価する故、以上のその希望を込めて星を一つ減らした。