著者は森林ジャーナリストであり、長年の実績にもとづいて最近の新しい森林を取り巻く諸説や最新の研究成果等を分かり易い文体で紹介しており、読み易い内容。また、過去の自らの主張と矛盾する新説に対しても、柔軟に受け入れる姿勢は好ましい。
しかし、同時に著者にとって否定的な学説には煽り口調で断罪する等、著作者としての姿勢にやや疑問を覚えざるを得ない箇所も見える。さらに、著者は日本の過去の林業史の考察について省みる必要も無いものとしているが、それについては江戸時代等の林政に対する充分な論証や知見を踏まえての反論で無い点等は残念である。周辺資料との検証がないまま絵画資料等を絶対的な資料ととらえ動かし難い史実として判断しており、考察と言う意味では不充分であり即断に近い。これについては、「徳川の歴史再発見 森林の江戸学」徳川林政史研究所著等を併読する事をお奨めする。
結果として本書は新説を列記しているが、極めて散文的な傾向が強く、反証も論証も最近発表された新しい学説から深く分け入る物と成っていない。著者が気に入った新説を普遍的事実であるように記述する姿勢は大きな誤解を誘導しかねず、あくまで新説として論証は不充分である事を書くべきである様に思う。
過去の著者の制作傾向から見ても不充分な内容と成っているので、やや辛口の評価とした。