「少々のリフレ政策では慢性的なデフレを解決できない」とある。確かに、これまでのような「少々の」リフレ政策ではデフレは解決できない。
例えば、1999年2月から、2000年8月にかけて行われた日銀のゼロ金利政策であるが、インフレ率が正(インフレ)になってないにも関わらず、日銀はゼロ金利政策を解除した。2006年の量的緩和の解除の時も、インフレ率は正ではあったものの、1.0%以下の低インフレであった。しかも、2000年は物価の基準品目の改定年であり、もっとも上方バイアスがかかりやすい年であり、デフレを脱却したと断言できる状態ではなかった。
このような背景があるので、日銀が行った少々の金融緩和ではデフレなど解決できるわけがない。筆者はこの点についてどう考えているのだろうか。
さらに付け加えよう。2001年から2006年にかけて量的緩和を行ったわけだが、86ページの国債発行額をみれば、2004年から2007年にかけて国債発行額は減少にある。また、この時期は、一般会計税収も増加している。この時期は「いざなみ景気越え」とも言われ、実感なき景気拡大と言われたが、法人税収入が増え、実際に景気が良くなっていったことを意味する。もちろん、景気拡大の原因のすべてが量的緩和だとは言わないが、量的緩和による影響はあったであろう。この点について筆者は言及していない。
99ページにはこの時期の量的緩和によりマネタリーベースを増やしたにもかかわらず、物価が上昇しなかったということが書かれている。マネタリーベースを増やしても物価が上昇しないということはなんらおかしくない。この時期は前述のように景気が拡大している状況である。つまり、モノの量が増えていた時期と言える。お金の量が増えた一方、モノの量も増えたので、物価の変化はあまりなかったと言える。しかし、マネーストックの伸びが小さいのは事実(伸びは小さいが伸びている)であり、この点については筆者の言うように、銀行が企業に貸し出さない&企業が借りないということが原因であろう。
結局デフレ脱却が先か経済成長が先かという話になるわけだが、生産性が上がってもマネーストックが変わらなければモノ余りになり、より一層のデフレとなる。私は経済成長も必要だし、現状ならば日銀のより一層の金融緩和も必要であるといえる。今までのような「少々の」金融緩和では不十分である。112ページでハイパーインフレに対しての危惧があるが、ハイパーインフレに対する反論はされている。
また、日本は少子高齢化で経済成長が望めないというが、ドイツだって少子高齢化が進み、人口も減ってきている。しかしリーマンショックの2009年を除いて、経済成長していっている。少子高齢化・人口減を経済成長できない理由にするべきではない。そもそも、人口減によりGDPが増えないと言うが、一人あたりのGDPも減少しているのだから、人口減は言い訳にすぎない。
そもそも、読み進めていくと、マンデル・フレミング・モデルのところで、「変動相場制を採用している国では、景気浮揚対策は金融政策に頼るべきだという結論になる」と書いてあるではないか。先ほどの日銀擁護はどこへ行ったの?ようするに、国債を発行して市中からお金を奪うからいけないわけで、そこで日銀が国債を買い取れば、市中のお金は減らず、公共投資の分だけお金は増えるわけである。それでも、それをやらない(やっても少なく、短期国債や残存期間が短い国債の購入ばかりしかしない)日銀に非はないというのか。
しかし、総じて、藤沢氏の話は氏の日銀擁護を除いて賛成できる。たとえば、「年金はねずみ講」といった部分や「規制の撤廃」といった部分は大賛成だ。それに「日本国政府は借金もたくさんありますが、いろいろな資産をたくさん持っています」というのもその通りだ。もっとそっちを強調すべきだろうが、財務省が嫌がるから控えたのだろうか。