これは著者が中途で大手ホテルチェーンに採用され、女支配人として着任した新宿歌舞伎町のビジネスホテルでの出来事を綴った実話である。
著者の女支配人は、全く知らないでこのホテルに着任したのだが、その直ぐに目に飛び込んできた光景はロビーではヤクザがたむろし、最上階を定宿として使っているとんでもないホテルだった。
浄化槽には、覚せい剤のポンプが浮いていたり、ホテル内でかつあげをしていたり、罵声や怒鳴り声が聞こえる状態で、従業員も怖がり、警察もこのホテルは犯罪者の宿泊場所だと考えている始末だった。
著者の女支配人は、そんなヤクザにひるむことなく排除に尽力してゆき、丁寧に説得し、宿泊を拒否し続けたが、命の危険にも何度と無くさらされた。時には、「この野郎ぶっ殺してやる!」と叫んで向かってくることもあり、もうこれで終わりだと感じたことも度々。
しかし、従業員が安全で楽しい職場を創ることが、支配人である著者の責任であると自覚し、何か言われたら、すべて私に変わってくださいと、前面にたって対応する姿勢を貫いた。また、そんな姿に従業員も支配人のことをとても信頼するようになっていき、次第に歌舞伎町商店会や警察も浄化に協力するようになる。
ところが、ここは全国からヤクザが集まる新宿歌舞伎町であり、そう簡単には変わらない場所。いくら話しをして宿泊拒否や迷惑行為を止めるように言い争いを行っても、次から次へと現れる。普通の人なら精神的に参ってしまいそうな壮絶な日々も、著者の女支配人にとっては、何か心に問題があるからと労わって考える器の広さを持っており、次第に浄化への変化が見られるようになってゆき、同時に歌舞伎町自体が浄化されていく。そして、歌舞伎町で著者のことを知らないものは居ないほどまで一目おかれる存在になってゆき、警察からは表彰状までもらうほどになっていった。
これらは、おもいやりや気遣いを大切にする著者の一貫した考えや行動からのものであり、地域や従業員との連帯感と団結心を生んでいる。また、ガンで亡くなってしまったスタッフが、このホテルで著者と一緒に働けたことを感謝し、一時退院した際は、お土産を持って、従業員たちに最後の挨拶に現れる場面には泣いた。
この本は、タイトルに負けない力強い内容が、生々しく描写されており、あたかもその場所で一緒に戦っている気持ちになりながら、著者の温かい心が随所に感じる良い本だと思う。特に現代の日本人の心の病は何かと思わせる一冊で、今度、歌舞伎町のジャンヌダルクに会いに泊まりに行きたいなと思う本でした。