相変わらず切れ味鋭い野口悠紀緒氏の新刊。個人的な実感に照らしても正にそのとおりではないかと思える指摘が多い。備忘及び将来の検証のために、その幾つかを記しておくことにしたい。
・ 需給ギャップというが、「余っているのは、古いタイプの生産活動の生産能力」に他ならない(18頁)。
・ 為替が円高になるなら、促進すべきは「日本人の外国旅行」(39頁)であり、「これを利用した経済活動」(42頁)である。
・ 実質残高効果説によれば、デフレが寧ろ需要増大につながる。それが働かないのは、流動性トラップの故である(69頁)。
・ 設備の更新が進まないため、わが国の将来の生産力は低下する(101頁)。そうなると「税収は見込めないので、国債を実際に償還できる可能性は急速に低下している」(114頁)。
・ 財政赤字解消策として最もあり得るのは「インフレ税」(106頁)であり、国債の海外引受けもそれを促進する(108頁)。なぜならば、引受け時の買い叩きが円安を招き、輸入インフレとなるからである(121頁)。
・ 「本当に恐ろしいのは、インフレと円安なのである」(111頁)。
・ 今や国営ねずみ講と化した年金収支予想の「最大の問題は、賃金上昇率の想定が高すぎることである」(138頁)。
・ 法人税は利益にかかる負担であるから、社会保険料とは異なり、これが生産コストを高めることはあり得ない(189頁)
それにしても、事業国家としてのみではなく投資国家としても生きていくというのが日本にとっていまひとつの国家的選択肢ではないかとも思うのだが、氏曰く「〇七年夏以降の円高・ドル安によって、債権国である日本が巨額の損失をこうむった。その額は、現在までの数年間で一〇〇兆円近くに及ぶ。この事態は、「史上最大のデフォルト:債務不履行」と呼ばれるほどだ」(110頁)という体たらくでは、その道も遥かに遠い(加えて284〜5頁を参照)。国民の生命と「財産」を守ることは、国家(=公務員の方々)の義務であり責務である。