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日本を決定した百年―附・思出す侭 (中公文庫)
 
 

日本を決定した百年―附・思出す侭 (中公文庫) [文庫]

吉田 茂
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

『日本を決定した百年』は、簡にして要を得た記述にて明治建国から戦後復興までの日本の近代化を跡づけた異色の歴史書である。すぐれた歴史感覚をもち勤勉に働く国民を描きながら、吉田は「日本人は甘やかされてはならない」と述べることを忘れていない。吉田の肉声が聞こえる「思出す侭」を付す。

登録情報

  • 文庫: 299ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (1999/12)
  • ISBN-10: 4122035546
  • ISBN-13: 978-4122035546
  • 発売日: 1999/12
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 中間
形式:文庫
立花隆著『天皇と東大』の冒頭で紹介されていた1冊

日本の近現代史の要約は秀逸、との氏の評は的確

本1冊でなく、初めの10数ページくらいがそれに割いてある。

必見です
このレビューは参考になりましたか?
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
政治家はとりわけ歴史に学ぶ眼力を備える必要があるが、『日本を決定した百年』の著者吉田茂にも確固たる歴史観、人間観があったことが窺える。

明治新政府の先人政治家たちの叡智から説き起こし、「人づくり」こそが「国づくり」の基本なのだと看破する著者の「人間性」が、まるで肉声に接する如く垣間見られる。

民衆生活の底上げが肝要と考え、金欠病の新政府に学校建設費を寄付した教育熱心な地主、資産家たちがいた。また、警戒心や抵抗感なしに<進取の気象>を示して積極的に諸外国の文明文化を摂取できた国民性が、近代化事業の成功要因だと著者は強調する。

先進科学技術や文明製品の導入の容易さに比べ、キリスト教倫理観やギリシャ・ローマ法起源の法理念、あるいは時代が確立した社会制度や慣習、国家間の外交術などは一朝一夕に真似できる代物ではなかった。

保守政治の権化とされる吉田茂だが、実際にはチャーチルの「グッドウィル・アンド・ペイシェンス」(善意と寛容)に立脚した「ディプロマチック・センス」(外交的感性)を信奉する立場から、戦争反対、早期講和論者として軍部から目の敵にされていた生来のリベラリストであった事実を看過してはなるまい。

著者は、真に近代的な「日本人」への転換過程で軋轢と錯誤、戦争の悲劇という<代償>を払わされた歴史を振り返る一方で、附録の『思出す侭』では自由に筆を走らせ(滑らせ)て、シャンペンでの失敗談や憲兵隊の間者(スパイ)への粋な計らいなどエピソード披露を惜しまない。

「最近のわが政界には保守合同ということが唱えられているが、従来政界の安定を傷つけて恥じざる輩と合体して政界の安定を求めんとするが如きは、事情に通ずるものよりすれば解し難いところである。抱腹絶倒の限りと思うものもあるかも知れない。場合によっては一種の詐謀となる。」 

半世紀前の政治情勢に対する言及だが、「保守合同」を「保守新党」に置き換え、野党自民党から離党者が絶えない昨今の政治状況を思うと、合従連衡に血眼な政治家連中にはなんと耳の痛い指摘だろうか。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
本書が最初に出版されたのは昭和42年。もともとはエンサイクロペディア・ブリタニカが付録として出している補追年鑑に寄稿した英文に手を加えたものである。本文177ページ。付録部分をあわせても213ページの薄い本である。しかし中身は濃い。

内容は戦後復興がなった日本の元首相が、明治維新以来近代化の道を驀進した日本の過去100年の歴史を「マルクス主義という完全に間違った視点」に全く毒されない澄んだ目で振り返り、見直したものである。そこにははっとさせられるような鋭い視点がふんだんに盛り込まれている。

最初は「幣原外交」に対する吉田の厳しい批判である。幣原は一般には軍部と対立し、田中義一の武断外交と対置されて、平和外交を貫いた「正義の士」のように祭り上げられることが多いが、当時から実は評判の悪い人だった。吉田は幣原外交の欠陥を「中国のように(法秩序が崩壊し)混乱状態にある国に対して、文字どおり法律的な態度をとることには無理があった」とする。当時の満州は匪賊、馬賊も交えたシナ軍閥、満州軍閥が割拠する混乱の渦中にあり、そうした中で現地に進出した日本人はシナ人から「排日運動」という現在のインティファーダにも似た不当な圧迫を受け続けていた。英国政府などは、かかるシナの非合法な自国民圧迫については軍隊を派遣するなど断固たる措置を取って、シナに進出している自国民を保護したが、幣原はシナがあたかも日本や欧州同様の先進国であるかのごとき仮想空間と見立てて法律家のように望んだのである。現地では法律なんかどこ吹く風の権謀術数が横行していたにもかかわらずである。しかも幣原は三菱財閥に連なる大金持ちのエリートで庶民を馬鹿にし、十分な説明責任を果たそうとしなかった。こうした幣原の高踏的な傲慢さが、彼の外交が「原則的には正しかった」にもかかわらず、多くの反対者を持ち、後の軍部中心の満州政策(満州事変、満州国独立へとつながる)への道を開いたという指摘は重い。日貨排斥で満州に進出した庶民が塗炭の苦しみを味わっている中、大豪邸に住んで召使にかしずかれながらナイフとフォークをカチャカチャやってステーキをほお張っているような男に日本国民の共感を勝ち得ることは、土台無理だったのかも知れぬ。

戦前の日本社会に決定的なダメージを与えたのが世界大恐慌に端を発する絹の輸出の大暴落であったという指摘も重い。日本の農村は現金収入の多くを副業たる絹糸の輸出に頼っていた。それは主に米国に輸出され「絹の靴下」として女性用のストッキングなどにも多用されていたのだが、これが世界大恐慌で大幅に減少、日本の農村経済を事実上崩壊させた(当時、絹糸の輸出は日本の全輸出の35%を占めていたというのだから、今の自動車輸出よりその比重は高い!)。しかし、これには、今でいうグローバリゼーションだけでは説明できない要因もあったことを諸君は知っておかねばならない。丁度この頃、米国のデュポン社がナイロン繊維の開発に成功し、それまで高嶺の花だった絹製の女性用ストッキングに代替する安価なナイロンストッキングの商品化に成功し、市場から日本製絹の靴下を急速に駆逐し始めたのである。大恐慌による購買力の低下に悩む米国の女性にとって、ナイロン製ストッキングの登場は天恵の慈雨であり技術革新の勝利であった。日本は過度に絹に依存しすぎ、技術開発に敗北したという側面も忘れてはならない。

しかしなんといっても本書の白眉は吉田茂の透徹した中国観であろう。吉田茂は英国派のエリートというイメージが濃いが、幼少期より徹底して漢籍を学び中国の古典に通暁した東洋的教養の人でもある。外交官になった後も長らく中国に駐在しシナ人の実態を潰させに観察し続けた人である。そういう背景もあるのであろう。随所に鋭いシナに対する観察が光る。例えば、戦後しばらくの間、毛沢東が支配する中国は「向ソ一辺倒」「中ソ一枚岩」などと中国共産党お得意の内容空疎な大宣伝をかましていたわけだが、いち早く吉田は「中国民族は本質的にソ連人と相容れざるものがある」と喝破している。そして返す刀で、「中国は古来妙な国で、東洋でいちばん優秀な民族でありながら、昔から世界の大勢に順応することができなくて、孤立もしくはひとりよがりの中華主義を発揮して、結局は孤立するという道をたどってきた。しかし、中国は現在の状態(大躍進政策や文化大革命で疲弊しきった超貧乏国家)のままでつづくということはありえないから、日本としてはこれを目の敵にするのではなく、よい方向に導くくらいの気持ちをもたなくてはならない。しかし中共のように、自分の国はいちばん偉いと思っているうぬぼれの強い国とつき合っていくことがむずかしいことはいうまでもない」。この吉田の指摘は、現在はもちろん未来永劫日本人が教訓として胸に刻むべき金言であるように思える。

そして吉田は、戦後の日本を「良き敗者(good loser)」と表現するのである。いつまでもうじうじと過去に拘泥せず、負けた以上きっぱりと敗北を受け入れて新たな再出発を期す。これが出来たからこそ、日本は奇跡の高度成長を実現できたのだという。戦後、アメリカの軍隊を日本に受け入れ、日米安保条約を結ぶことで日本は戦前、武力に訴えてでも獲得しようとした市場、技術、経済権益のほぼすべて(いや、それ以上のもの)を獲得することが出来た。それもこれもアメリカの軍隊を日本の国土に駐留させるという吉田の決断が基礎となっている。今、寺島実郎なる「平成の松岡洋右」が日米安保条約解消につながる「アメリカは日本から出て行け運動」を恥も外聞もなく展開し、良識ある人々の顰蹙を買っているが、こういう時だからこそ、戦後の日本外交のグランドデザインを描いた吉田茂の世界観を本書を読んで今一度噛み締めてみる必要があると思うものである。
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