植物生態学を専門とする著者の主張は納得性が高く、非常に勉強になる。だがこれが果たして「ジュニア新書」として、中高校生程度の初学者向けかと言うと疑問がある。むしろ「応用編」なのではないか。
「メヒシバはC4植物で…」などという、専門外なら学部学生でも怪しい(?)言葉が説明なしに使われるのはまだ許容するとしても(笑)、例えば著者は、「新しくつくられた半自然も捨てたものではない」と書き、僅か数ページ後に、「堤防やゴルフ場内であっても、一度、タネを撒いたり植えつけたりすることで…(中略)…それが定着してくれるなら問題ないと思います。」などと書いてしまう。するとそれこそ、著者自身の指摘のように、「野の花を植え込んで花壇さえつくれば、都市の中に生物多様性に富んだ自然が出現した、と思いたくなる日本人の自然観」を、助長することになりかねないのではないか。
もちろん、本書をきちんと読めば、著者が「花壇で良い」などと考えていないのは明らかなのだが、他にもところどころ、学問的に正確であろうとするが故にだろうか?例えば農薬の説明箇所や帰化植物の説明箇所などにも、初学者には真意が伝わりにくいだろうと感じたり、場合によっては曲解されかねないと思う部分も散見された。
とは言え、日本人特有の視野の狭い自然観から惹起される我が国の現在の生物多様性保全活動の問題点の指摘など、まさに正鵠を射たものであるし、既にかつての水田を中心とした農村の生活には戻れない現代の我々が、これからの日本の新しい生物多様性保全を考えるに際しては、間違いなく有益な提案に満ちている。「ジュニア新書」ではあるが、ある程度まで生物多様性保全にリテラシーのある大人こそ読むべきだし、むしろそういう人にこそ、役立つだろう。ボランティアなどで活動している人には是非読んでいただきたい。私はそう感じた。