西村幸祐氏と石平氏との初の対談本。
対談にありがちな馴れ合いがなく、二人が真剣勝負で対話を通して、議論を深めていく。
「米中を捨てる覚悟はあるか」という刺激的なタイトルだが、それは精神的に米国と中国を捨てられるかという現在の日本人につきつけた刃でもある。二人の対話を通して日本に今何が最も必要なのかということが自然に理解できるようになっている。
民主党政権の普天間基地移転を巡る迷走が、何よりも「米中を捨てる覚悟」がない無気力な日本を物語っていると言えるだろう。また、それは民主党だけでなく自民党の責任でもあること、さらに戦後日本人の責任であることが歴史的に論理的に語られている。
日本が米国の属国のまま自立できなければ、中国の覇権主義に飲み込まれ、中国の属国になるというのは正しい指摘だと思う。かと言って二人は単純に反米を叫んだり、中国を向こうに回す強大な軍拡を主張するわけではない。独立国家として当たり前のことをしてこなかった日本人へ反省を促しているのだ。その前提として、日本の歴史を回復することを二人は挙げている。
政治、国際関係、世界経済、中国事情、米国事情、そして日米関係、日中関係・・・これらの難しいテーマが博識な二人の会話によって、面白くスリリングに展開されていく。歴史認識が国際政治の武器になっていることを石平氏は中国共産党の歴史観の変移から語り、日本がそれに対応できなかった空白の20年を日本の無思想状況に原因があると西村氏が語る。
政治史と文化史の境界から面白いように論理が展開し、結果として専門知識なしで難しい内容を面白く理解できるように構成されている。期待以上の内容で魅せてくれる本が滅多にない中、本書は最近読んだ本の中でべストに挙げられる。いい意味での期待外れに五つ星を進呈する。