一言で言えば、著者が理解していることと、理解していないことの差が激しすぎる。また、信頼できるところとそうでないところが奇妙に同居しているため、何とも扱いに困る。
そのため、本書を始め、著者の一連の著作は有る程度理解した上で、本書の誤り、もしくは誤解を招きかねない記載を指摘できるレベルになければ、お勧めできない。初心者の方には正しい知識と誤った知識を混在させてしまうため、絶対にお勧めできない。
また、著者は
東京電機大学工学部電子工学科卒業。米国テネシー大学工学部原子力工学科大学院修士課程(原子炉理論)修了。同大学理学部物理学科大学院博士課程(理論物理学)修了。現在、ロサンゼルス・ピアース大学物理学科教授。
との経歴をたどっているが、その経歴通り原子力(特に原子炉物理学)に対する理解は「大学院修士課程(原子炉理論)修了」レベルで「止まっている」と感じる。
さらに、厳しい言い方をすればそれも昔のお話しであって、現状はほとんど忘却しているのでは、と考えざるを得ない。
平易に書こうとする努力は多としたいが、少なくとも現時点において原子炉物理学(原子炉理論)専攻の修士論文で、この程度の理解で修士論文を執筆した場合、間違いなく「落第(修士論文再提出必要)」のレベルと言える。
著者のキャリアとしては、「理論物理学」の専門の方が遙かに長いのであろうが、著者の一連の著作を読んでいて一貫して感じたのは、決定的に実際を理解していないことである。
理論面での説明も、理論物理学的な所での齟齬は少ない(ただし致命的なTYPOも散見される)が、原子力分野の意味合いが強くなると、いきなり信頼性が墜ちる(脱落というレベルではなく、なまじ誤解が強いために、素人が書いた方がまだ手当がつく)ので扱いに困るのが正直なところ。
理学者が工学の教科書を書くと、このような悲惨な出来映えになるとの、典型的な見本のように感じる。
以上、酷評となったが、平易に書こうとするために大変な努力を払ったにも関わらず、クロスチェックなどで平易に指摘できる誤り・誤解を招きかねない記述の除去を怠ったため、その努力が水泡に帰したと言えるだけに、大変残念に思うところである。
ただ、著者の一連の著作物は全て同じ調子であるため、著者には学習能力がない、とも指摘すべき所であろう。学歴だけで人を判断すると大変、と言うことがよく分かる例と愚考する。