登録情報
|
山本氏によれば、小松氏は敗因を21項目挙げています。例えば、「物量、物資・・・米国と比べ問題にならなかった」「陸海軍の不協力」など、よく言われているものもありますが、一方で、「精兵主義の軍隊に精兵がいなかったこと」「精神的に弱かった」「ひとりよがりで同情心ないこと」「日本文化に普遍性なきこと」等、一見するとあれっ、と感じるようなものもいろいろ出てきます。しかし本書を読み進めていくと、小松氏の著述と山本氏の体験がオーバーラップし、その圧倒的な臨場感で各項目の言わんとしていることに納得させられてしまうのです。
本書は1975年の雑誌連載をまとめたものなので、当時の組合や学生運動など、少々古臭い記述も散見されますが、ではそれから我々は何が変わったろうか、と自省させられることにもなります。
余談ですが、本書で若き日の田原総一郎氏の記事が山本氏にこき下ろされている箇所がありますが、この人って昔からこういう人だったのね、とおかしくなりました。
それでも本書により、自分が全く知らなかった戦地における日常というものを知らされた。
「お国のためにと会社を辞めてきてみれば、現地に着いてもすることが無い」
「兵隊をこんなに送られてきても困る」等という描写は、
「失敗の本質」を浮き彫りにするものであり、また現在の我々にも決して無縁なものではなく、
(であるからこそ、何度も読み返したいと思うのであるが)
「戦火に逃げ惑う親子」「大本営の現状認識の甘さ」等などという、
よく聞く戦争論よりもある意味で非常にショッキングだった。
バシー海峡の鬼気迫る兵員輸送状況こそ、餓島での死屍累々という情景以上に、もっと世に知られてよいのではないか。
唯一指摘すべき点があるとしたら、これを「日本人」の問題とする点である。
敗因分析はよく英米との対比で語られるが、それではもし同じ状況に置かれたのが、
日本人でなく他のアジア人だったら、ドイツ人だったらどうだったのか、という点は、論議を待ちたいところである。
同書は、敗因分析を超えて、「いつ書いたのか」「どこで書いたのか」「誰がどういう立場で書いたのか」
という視点から見る、「信じうる報道のスタイル」という点も学ぶところが多かった。
左へ右へとよれてきた日本の自己反省が、この時期にこういう冷厳な事実分析に立ち戻り、より信じうるものとなってきた。
今の時代に、本書を改めて刊行してくださったご担当者の慧眼に感謝したい。
著者の他の太平洋戦争物も全て読んでみたいと思っている。
|