中国人、韓国人、台湾人のスタッフと同じ職場で働く機会に恵まれたのですが、気がついたのが、彼女/彼等が明治以前の日本の歴史をほとんど知らないか無関心なこと。当方のアジア史の知識も怪しいので偉そうなことは言えないのですが、追いつくべき対象としての日本にのみ関心が偏っているなという印象を受けました。比較的知識のある近代史についても例の「歴史問題」が妨げになりお互い避ける話柄になっているのが現状です。
そんな中で今注目している本が本書です。著者は前え書きで「日本列島という地域で営まれた近・現代史」を書くように心がけたと言います。19〜20世紀において時期の早い遅いはあれ、世界のほとんどの地域で体験された「国民国家」化の日本での展開を描写してゆくのです。その言葉どおり、江戸期に遡って国学や倒幕活動等を通じた国民意識醸成の様を見、政府の産業・教育・軍事等を通じた意図的な国民の「造成」にも頁が割かれています。
また、「国民国家」化にあたって必然的に発生する国内の階層間対立にも目を向けます。著者の専門を活かして当時の労働者や小作人の生の声を収録している点、一枚岩でなかった近代化の真相を巧まずして読み手に伝えてくれます。
そして、「国民国家」の成長と軌を一にした周辺諸国への伸張へと筆は及びます。ここで注目したのはバランス感覚の良さ。三・一運動の結果、朝鮮で成立した斉藤「文治」政治については、従来形式的なものに過ぎないという評価を受けてきましたが、部分的ではあったものの「都市文化」の萌芽に寄与したと再評価するなど、広く目配りしている点が信頼感を与えてくれます。
近々、中国語・韓国語にも翻訳されるとのことで大変楽しみ。もちろん職場の外国人スタッフにも勧めてみるつもりです。