和田薫はアニメ「犬夜叉」の音楽で有名ですが、実は現代日本で最も「和」の
テイストを持つ曲を生み出す作曲家です。東京音楽大学で伊福部昭に師事し、
まるで師匠が生まれ変わったかのような”伊福部節”をその特色としています。
若書きの「オーケストラのための民舞組曲」は伊福部昭の曲と聞き違うばかり
の作風でしたが、近年の曲では、師匠の影響から徐々に脱して和田色を出しつつ
あるようです。彼の作風はいわゆる現代音楽でも前衛でもなく、和の音楽に立脚
しつつ新たな音楽(彼のポリシーは「喚起する音楽」)の構築を目指していること
もあり、非常に明快で力強く、日本人の琴線に触れるものが多いです。
収録曲の中では津軽三味線の第一人者である木乃下真市をソロに据えた「津軽
三味線とオーケストラのための絃魂」と和太鼓の第一人者である林英哲を迎えた
「和太鼓とオーケストラのための協奏的断章”鬼神”」が一番の聞き物です。
その他では「管弦楽のための交響的印象”海響”」が素晴らしい。日本人なら
血潮が騒ぐような熱い曲です。
ただ、指揮者は日本人ですがオーケストラが2管編成と小ぶりで、ドイツ人に
よる演奏であることから、強烈なエネルギーの放出や日本独特の節回しは稀薄
です。作曲者の自主制作盤である日本フィルとのライヴ録音(和田薫HPから
通信販売で入手可能)と比べると、その点で劣るかもしれません。ただ、世界
初演である「鬼神」は林英哲のグループの力が炸裂しており、この曲だけでも
十分に価値があるディスクだと思います。