ジャーナリズムの資料発掘力と関係者探索能力には、脱帽のほかはない。本書の前半は、大衆娯楽としての映画そのもののたどった道を丹念に追っている。「プロパガンダとしての映画」の道は後半で語られている。しかし、国策としてのプロパガンダ化の記述の多くはゲッべルスのドイツについてであり、日本における「プロパガンダとしての映画」に関する記述は少ない。この点については、本書がいみじくも指摘しているとおり、ドイツのように映画を積極的にプロパガンダ化するだけの政治指導者を得ることもがきず、さりとて映画への不干渉を貫いたアメリカの立場をとることもできず、戦局の悪化とともに映画産業をただただ衰退に追い込む以外の道を選択しえなかった日本の悲劇をみとることができるだろう。149ページに掲載されている10代の原節子は、その後の日本の運命を考えるとき、良き時代の最後の光芒を象徴するかのようで、美しくも悲哀を感じさせる。精力的な取材を通して、昭和史の一断面を語り伝えようとするジャーナリズムの情熱には衷心より敬意を表したい。本書で発揮されたジャーナリストの筆力も見事である。