岩波新書の「シリーズ日本近現代史」の最終巻。各巻の著者がそれぞれ担当した時代の核心的な問いに答える形をとりつつ、執筆の根本的問題意識や現在への問題意識を披露する。各巻のダイジェストとしても興味深く読める。「はしがき」にあるように、シリーズへの導入としても好適に違いない。
だが、シリーズ全巻をフォローしてきた身としては若干物足りなさも否めなかった。成田龍一による終章「なぜ近現代日本の通史を学ぶのか」はとても興味深かったが、むしろこのテーマにもっと紙幅を割き、様々な現代的問題(歴史認識、歴史教育、司馬史観etc.)にひきつけつつ4〜5人の執筆陣で座談会形式で議論するなどの工夫があってもよかったのではないか。本シリーズ執筆陣は第一線で活躍する研究者ばかりなので座談会形式で一堂に会するのはなかなか難しいのかもしれない(岩波書店は「思考のフロンティア」シリーズにおいては第一線の研究者らによる非常に刺激的な座談会ものをたびたび出すことに成功している。)が、このシリーズには楽しく学ばせてもらってきただけに、最終巻がまとめ兼イントロになってしまったのはちょっと残念だったかもしれない。
もちろんその点は評者の個人的な他愛もない感想であって、この最終巻の価値を損なうものではない。改めて各巻執筆の動機や構想が端的に示されることで、各巻の理解が深まるとともにもう一度読み直したくさせてくれる。各章末の推薦書リストもいい。シリーズ最終巻だが本書で日本を巡る思索の旅が終わることはない。改めて再出発するうえでの指針を示してくれる、「寄港地の灯台」のような一冊だと言える。