本書は、この国の林業や水産業も含めた農業政策について、「政府の失敗」と断定し、問題を指摘しつつ、具体的な解決策や方向性を明確に示したものである。
それにしても、この国の政府は実に多くの失敗を積み重ねてきたものだと感心する。
国が保護しているのは、主業農家やサラリーマンより所得の高い兼業農家であり、そのため効率の悪い農地が温存されている。そこに、GDPに占める農林水産業の4倍もの予算を投入している。
農地法による参入規制があり、金融事業と経済事業を同時に行っている農協が独占的に事業を行い、かつ金融事業には金融庁検査も入らず後任会計士監査も免れているという。それどころか、農家の数よりも農協の職員数が多いという異常な状況だという。
また、政府はカロリーベースで自給率を計算しているが、金額ベースでは70%と国際的に見ても遜色のない数字が示されている。すなわち、カロリーベースの自給率を引き下げているのは、霜降りの牛肉を育てるためや脂肪分の多い牛乳をつくるためのトウモロコシである。
以上の議論を踏まえて、著者の提案は革新的である。
米の生産調整をやめ、株式会社や主業農家へ農地を貸し出し、その過程で下落した米価については、戸別所得補償を行うというものである。
林業については、フィンランドの事例を引きながら、保護すべき自然林と資源としての人工林を区分し、収益の上がる林業を検討している。ここでも、日本の林業への補助は、生産性のない林にまで及んでいるために、ほぼ同じ森林面積を持つフィンランドの10倍にも及んでいるという。また、森林組合にもさまざまな特権が与えられ、その役割は本来の役割を離れ公共事業の受注がメインになってしまっているという。
水産業については、早いもの勝ちになっているオリンピック方式が稚魚までも獲ってしまう弊害から資源の枯渇を招いているとして、かつて同様の事態を招いたノルウェーを例に、割当方式への転換を勧めている。ノルウェーでは、資源量が増え収益が上がるようになり、漁船も大型化し設備も立派なものとなり、若者にも人気の産業となっているという。ここでも問題となるのは、事実上の参入規制が与えられている漁業権であり、地元漁業者を優先した結果がかえって漁村の衰退をもたらしたとし、参入意欲があるものであれば誰でも漁業に算入できる環境を整備すべきであるとしている。
産業の構成比に比べて多くの予算を投入しながら、様々な問題点を抱えるこの国の一次産業に、その改革の方向性を示してくれる意欲作である。