月刊誌「選択」創刊号以来の名物連載から精選された記事26編。食と健康、安全といった切り口で、いまだ厳然と存在するわが国の暗部や政治的・経済的癒着の構図、官僚組織の病理などを切れ味鋭く抉り出し、あたかも良質なドキュメンタリー番組を観ているかのよう。それにしても、内容的に農林水産省、厚生労働省、法務省がらみの記事の多さが目を惹くが、これらの官庁は一体どうなっているのか。
「ドメスチックな権益保護だけで役所の階段を上り詰めた人物が、国際金融の舞台で大きな実績をあげられるほど世界は甘くない」(106頁)。
「「国連大学」には見えない部分が多い。・・・ 施設費の二重払い、職員の常識はずれな高額給与、悪名を馳せた議員年金より手厚い年金制度など枚挙にいとまがない。この闇はさらに深いかもしれない」(117頁)。
(裁判員制度の)「対象となるのは地裁の一部事件のみであり、東京高裁という堅固な官僚司法の砦は揺るがない」(144頁)。
(裁判員裁判の下では)「数日の公判で結論を下すので、長い時間をかけて公判鑑定を行う余裕はない」(253頁)。
「社会全体に広がる事なかれ主義」(95頁)が更に増殖し蔓延するいま、事態の改善に動かない関係者は、もはや不作為による共犯であるとさえ云えよう。もはや其処彼処で政治的・経済的・社会的に機能不全が起き、壊れかけのラジオと化しつつあるわが国の状況が大変よく理解できる一書である。