元警察庁キャリアによる書であるが、様々な箇所に疑問点を感じざるを得ない。
まず、作中で示されるデータの時期がバラバラでその理由の合理的理由がない、ということ。
本書の序文では、秋葉原事件などを出し「08年前半だけで無差別殺傷事件が5件も起きた」という。ところが、1章で示される犯罪の件数は1988年と2006年の単発の比較のみ。一方、最新の状況として、09年5月のニュースまである。
なぜ、それぞれのデータがバラバラなのだろう? また、件数から恐らくは警察白書のデータと思われるのだが、著者はデータの出典は示していない。
また、検挙者の高い率が少年で、ひったくりなども少年の比率が高い、という。しかし、少年検挙者の大半は自転車泥棒であるし、ひったくりは時系列での比較がない。
著者の主張が一方的なのも気になる。
取り調べの可視化などに対し、様々な弊害がある、と述べる。しかし、著者の主張に対しても同じような弊害があることは一切考慮せず、ただ、こうせよ、と述べるのみだ。
例えば、性犯罪者は再犯率が高いからメーガン法で徹底的に監視せよ、という。また、仮釈放された者の4割近くが5年以内に刑務所へ戻っている。だから、仮出所を認める基準を厳しくせよ、という。しかし、前科者であっても、食べていかなければならない。メーガン法や仮釈放の基準が改まると、却って社会復帰できず、「食べるために罪を犯す」という危険性を高めてしまう。
実際、『累犯障害者』(山本譲司著)などを読むと、その実情がわかると思う。
他にもプライバシーなどと言わず、監視カメラなどを設置せよ、というのだが、設置・運用の費用というのも当然掛かるし、今度はその情報を用いた犯罪が起こる可能性、というのも考察しなければならないはずだ。
データの使い方、主張の一方的さ。疑問点が多く残る。