国の現役官僚が書いただけあって、自分の省からの委託調査結果を含めて幅広く題材を集めてあるが、水ビジネスの展開に向けた国の政策や民間企業戦略の「あるべき論」に関する講釈がやや多い感じを受ける。
特に、「実績を積むこと」、「規模の経済、範囲の経済を確保した企業の創設」、「コスト削減」、「国に頼らず、国に頼る」、「リスクを取る」といった、海外展開に必要な「7つの留意点」として述べられていることは、全くもってそのとおりであるが、そのひとつひとつを実現するのは並大抵のことではない。そして、最後にケネディの言葉、「国があなたに何をしてくれるかを尋ねるな。あなたが国に対して何ができるかを尋ねなさい。」の引用を見るに至っては、なんとも白けてしまう。
水ビジネスを推進するための政策の枠組みは霞ヶ関がしっかりつくるが、そのレールに乗って実際に海をわたり、リスクを取るのはあくまで民間企業の自己責任。国がレールまで敷いたのだから、それ以上は国に頼らず自立して努力せよということなのであろう。しかし、本書で何度も出てくる「ガラパゴス化」したわが国の上下水道産業の姿とは、これまでの国内の諸規制や行政指導がもたらした産物という側面があることは否定できまい。わが国の水ビジネス企業に「国からいくら予算を獲得するかではなく、自らリスクを冒す気骨を持て」とまで言うのであれば、国は官民あげての護送船団を新たに組織するような取り組みはただちに止め、もっとずっと後方に退き、わが国の企業が国内・海外ともに自由に競争できる条件を整える裏方に徹することが最も肝要と思われる。
ここまで民間企業の肩を持つ必要もないかも知れないし、著者の意図は「おわりに」にも書かれているとおり、わが国企業の奮起をうながす点にあるのであろうが、残念ながらそのようには読み取れなかった。