戦後の日本古代史研究を牽引した一人である井上光貞氏が、1965年に著述し、日本史ブームに火をつけた名著。現在も版を重ねる岩波新書の「日本国家の起源」で提示した内容をさらにかみくだいてわかり易くし、それ以外の内容も含めて詳細に叙述している。出版後の考古学や古代史の研究成果は目覚しく、現在ではこの書を基本書とするわけにはいかないが、考古学や神話学などの他領域の学問成果との連携の仕方、視野の広さ、重要な学説を紹介しながら自説を展開する叙述方法などにより、それまでの古代史の研究状況を十二分に堪能することができる内容となっている。ただ残念なのは他のレビュアーの方も書いておられるが、改版にあたって現在の学問水準と比較して、現在でも有効な視点は何かを解説に期待していたが、森浩一氏の回顧録になってしまったことである。1965年の著述としては星5つであるが、基本書としての価値がやや薄れたこと、解説が期待はずれであったので星4つとした。なお最近出版された佐伯有清氏の岩波新書「邪馬台国論争」の中で、考古学者の小林行雄氏が内容にクレームをつけた話がのっている。興味のある方は合わせて読まれるのも楽しいかもしれない。