著者は2007年正論大賞を受賞しているが、本書は安易な右寄りな著作ではないぞ。
現代日本における「愛国心」という言葉に対して誰もが持つ(潜在的に持っていると推測する)アンビヴァレントな感覚を、言葉で丁寧に説明しようとしている。
愛国心を「市民的ナショナリズム・民族的ナショナリズム」とに分けて考察を進めながら、国家には愛国心は必ず教育される必要があると断言。
昭和の戦争を'「自衛戦争or侵略戦争」と単純な二元論で捉えることに異論を唱える。ペリー来航以来、自主自存を目的とし日本が近代化に踏み切らざるを得なかった論理的帰結が、侵略と敗戦であり、現代日本人が持たざるを得ない「愛国心のアンビヴァレンシー」であるとする。そしてこれは避けることのできない国家の運命だったと悲しげに語る。最後に西田哲学に代表されるような京都学派的な禅的な叙述で締めくくるあたりに、著者の「近代」というものに対しての絶望がひしひしと伝わってくる。
単純な愛国心高揚vs反愛国という不毛な議論。でも、この「はかなく散りゆくものへの慕情」こそが著者の持つ「日本の愛国心」なんだろうなぁと感じた。