幸福についての経済学、計量経済学的な研究の啓蒙書として、日本語で読めるしっかりした内容の本だと思います。
ただし、まったくミクロ経済学や計量経済学の知識がないと、少しとっつきにくいところはあると思います。
幸福という非常に主観的で、とらえどころのないものを、同じく効用という主観的で、個人間比較が難しい概念を基礎として成立している経済学の道具立てで分析するのはある意味とても自然なことだと思いますが、一読してみて、やはりまだ突っ込みが足らないというか、課題が山積みなのだなと感じました。
この本では、どのような条件の人が幸福を感じているか、感じていないかについて、アンケートのデータを統計学、計量経済学的な手法で検証し、その結果を紹介している章が多く、それ自体は大変興味深く、考えさせられます。(幸福なのは男性?それとも女性?)
しかし、主観的な幸福度を単純に性別、年代、所得、資産・・・などの「客観的」指標に回帰して得られた事実を、どのように解釈するか、そのような結果が得られた、生じたメカニズムはなにか、それをどう評価すべきか、などほとんど解明できていないし、どのような展望があるのか、整理しきれていない気がします。
以上のような疑問や不満にヒントを与えてくれるのが、幸福研究がはらんでいる方法的な課題について議論している第3章「経済学における主観的データの意義と問題点」です。
この章は常々主観的な要素についての研究に対していくつか疑問を感じていた私にとっては、同じような問題を感じている人が結構いて、いくつかアプローチがあるということを知ることができ、大変参考になりました。この章が、本書全体の気分というか雰囲気ををすこし引き締めて、全体に良い本にしていると思います。
主観的な概念をさらに主観的な構成概念で説明することが、たとえば共分散構造分析などではよく行われていると思いますが、そのような分析に若干胡散臭さというか、不安感を感じている人にとっても3章は参考になるのではないかと思います。
とにかく面白いです。