著者の「美術刑事」ぶりに圧倒される。
復元にあたり「何が描かれていたか」ではなくもう一歩すすんで「何が見えてくるのか」という着眼点に注目したい。
そもそも、絵画や仏像は人間が創造したもの。「何が見えてくるのか」を踏まえた復元であれば、当時の作品を実際に細部まで、時間をかけてトレースしながら復元する著者に当時の製作者の魂が時代を超えて乗り移り、著者に、また現代の人間に何を見てもらいたかったのかを訴えているのではないかと思うほど見事なまでの再現をみせてくれる。
復元すすめる過程でも、実際の作品をとりまく書物や建物、当時の装飾に詳しい学者など多方向から情報を集め、復元に踏襲していく様子など細かく書かれていて興味深い。
なによりも、いままで見慣れていた退色した渋くて存在感のある国宝が、なんと鮮明に本当に鮮やかなカラーで復元され、想像以上の驚きを受ける。人物の表情にしてもはっきりとその人物のその当時の瞬間の感情、また失われていた部分の驚きの再現など、どれも壮大なロマンを感じさせる。適切な解説のなかで、思わずタイムスリップしてその時代のその場所に紛れ込んだ錯覚さえも覚えてしまいそうになる。
修復の過程のストーリーと実際に修復された作品の解説がバランスよく説明してあり美術に明るくない自分にもスムーズに読み進むことができた。
国宝だけでなく、海外の美術品などもぜひ手がけていただき、そこから生み出されるストーリーもぜひ読んでみたい。