ミステリ作家・評論家、中間小説作家と色々な顔を持つ著者のもう一つの顔、喜劇(役者)評論家の顔を表に出して「日本の喜劇人」を評論したもの。姉妹編に「世界の喜劇人」がある。著者は自身のユーモア味の濃い小説からも分かる通り「おかしい」ものへ貪欲なのだ。
ロッパから始まり、エノケン、渥美清、コント55号等が取り上げられ、まさに戦後の「日本の喜劇人」に関する教科書のようである。例えば、クレージー・キャッツのように個人的な親交のあった喜劇人もいた筈(著者は当時TVで台本等を書いていたのではないか)だが、著者の筆致はあくまで冷徹である。TVや映画で観る姿と裏に隠された姿とを冷静に分析している。
特に印象に残ったのは、「トニー谷」の項で、愛児誘拐事件の事は本書で初めて知った。八方破れに見える彼の芸の裏にある翳が見事に描き出されている。また、「コント55号」の項で、萩本欽一に辛口の批評をしていたのを、(後から加えた)最終章で再評価しているのも興味深い。
解説は色川武大氏(私は阿佐田哲也と呼びたいが)で、これも興味深い。日本喜劇評論史に残る名著であり、それでいて誰にでも楽しめる、お勧めの一作。