文化人類学者による日本のヒップホップ研究書。原書は学術書だが、グローバル化と日本人のアイデンティティの問題、日本社会の人種問題、音楽産業の問題、あるいは若者の問題などに知的好奇心がある人であれば、ヒップホップそのものや、文化人類学、カルチャル・スタディーズなどに関する予備知識がなくとも、十分に楽しめる内容であると思う。問題なのは翻訳の質で、不自然な直訳の連続で非常に読み難い上に、論旨を意味不明にするような深刻な誤訳もみられ、原書の面白さがどの程度一般の読者に伝わるのか甚だ疑問。原書はむしろ学術書としては非常に平易に書かれており、日本のヒップホップという題材から考えても、適切に訳されればより多くの読者を得たであろうと思うと残念でならない。