中沢新一さんが様々な著作で繰り広げてきた論議が、そのまま子ども向けにわかりやすく書かれていて、ライターの入澤誠という人は優秀だな、と感じさせます。最初に登場する縄文時代のキャラクター「縄文さん」との対談の後、狩りの後で《傷口からドクドクと血を流し、死んでいく目の前のシカ。それを見て「やった!」という満足感と、「すまなかった…」という思い、そして飢えをしのげることへの「ありがとう」という気味がわいてきたら、それこそが「信心」のめばえです》(p.22)というのは分かりやすいまとめだと思いますし、最後の方に集中して出てくる「中沢さん」との対話にある《「信心」ってのは、さっきもいったように「なにか特別な存在を信じる心」をもつこと。それだけ》(p.100)という言葉にスムースにつながっていきます。
時代は下って弥生時代。自然をコントロールできるようになったと考えはじめた人々は、今でも日本の神社で最も多い「稲荷神」のルーツとなつた田んぼの神さまをまつる場所をつくりはじめます(p.35)。その後仏教が伝来しますが、弥生時代にもまだ残っていたアミニズムとはことなる全く新しいもので、なによりも「仏像」という形でビジュアルに見ることのできるものでした(p.47)。そして16世紀にはザビエルがやってきて、神道、仏教、キリスト教という日本における三大宗教が出そろいます。キリスト教は最初、デウスを「大日」と訳したことで新しい仏教と誤解されて信者を得ますが、そこには、ザビエルがインド方面からやってきたせいでもあったというのには笑いました(p.71)。八百万の神を信じ、宗教対立などをなるべく興さないようにしてきたのは、ユーラシア大陸から追い出された負け組の祖先を持つ日本人ならではのことだったのかもしれません(p.126)。古いお寺は、古墳のあった場所につくられるようになっていった、と(p.139)。この本は、難しい漢字にはルビが振っていありますし、外国で日本文化などを教える教本としても、いいんじゃないかと思いました。