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日本の「ミドルパワー」外交―戦後日本の選択と構想 (ちくま新書)
 
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日本の「ミドルパワー」外交―戦後日本の選択と構想 (ちくま新書) [新書]

添谷 芳秀
5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

戦後の日本外交は、憲法九条を維持したまま日米安保条約を結ぶという吉田茂の「中庸」の選択によって規定されてきた。しかしこの外交路線は左右両政治勢力から攻撃され、「平和国家日本」と「大国日本」という国家像の分裂をもたらし、時にそれが日本外交の足枷となってきた。本書は吉田路線の上を歩んできた戦後日本外交の主体性を「ミドルパワー外交」の視座から掘りおこす。ミドルパワー外交とは、大国との全面的対立を放棄しつつ、紛争防止や多国間協力などに力点をおく外交である。国際政治および戦後日本外交への深い洞察によって導き出された、等身大の日本外交を考えるための必読書。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

添谷 芳秀
1955年生まれ。慶応義塾大学法学部教授。上智大学大学院国際関係論専攻博士前期課程を修了し、米国ミシンガン大学大学院にて政治学博士号(Ph.D.)取得。上智大学国際関係研究所助手、慶応義塾大学専任講師、同助教授などを経て、1995年より現職。国際政治学、および日本外国を中心としたアジア太平洋の国際関係が専門(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 新書: 236ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2005/05)
  • ISBN-10: 4480062351
  • ISBN-13: 978-4480062352
  • 発売日: 2005/05
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.1  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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形式:新書
中国脅威論や対米(ブッシュ)批判、それに日本外交の「ふがいなさ」を嘆いた本は余りあれど、それでは今後日本はどのような国になり、いかなる戦略を構築すべきかを学問的見地から論じた書物は皆無といってよい。冷戦後日本外交の閉塞状況は、狭い研究領域の殻にこもり「一般化」の努力を怠ってきた日本のアカデミズムにもその責任の一端があるのではないか。そのようなことを考えていた矢先に本書と出会い、まさに目から鱗の落ちる思いがした。
筆者は戦後から今日に至る日本外交の実態を「ミドルパワー外交」として描写する。ここでの「ミドルパワー」とは、米国や中国のように軍事力を最終的なよりどころとし、必要とあれば一国主義も辞さないような「大国」とは区別される。そうした「大国」間で繰り広げられる権力政治からは一歩身を引いた外交が、「ミドルパワー外交」である(「身の丈外交」といったほうがいいのかもしれない)。
だからといって、それは日本外交の「自信喪失」や、国際政治におけるプレゼンスの低下を意味するものではない。むしろ、「ミドルパワー外交」としてのアイデンティティを確立し、ASEAN諸国や韓国と対等の視線をもつことで、日本外交の選択肢は飛躍的に広がる。それどころか、日米安保の位置づけが明確になることで、逆に日本外交の主体性も向上する、と著者は主張する。
「ミドルパワー外交」という言葉の用法や、果たして「伝統主義的国家主義者」なるものが本当に存在したのか等については若干の疑問が残る。だが、そうした疑問は決して本書全体の魅力を損なうものではない。おそらく、われわれのほとんどが日頃感じているであろう日本外交への漠とした疑問や不満――「対米従属」や「弱腰外交」等――の原因を探る糸口が、本書には隠されているのではないか。多くの研究業績と深い洞察に裏付けられた本書が、国内外でより多くの人々に読まれることを願う。
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形式:新書
ミドルパワーとしてここで想定されているのは、カナダや北欧諸国である。例えばカナダの安全保障におけるアメリカへの依存度は日本以上であり、経済力などからいっても間違いなく「大国」ではない。しかしG8のメンバーとして世界の主要国に名を連ねているし、対人地雷禁止条約の交渉では、大国が身動きとれない状況で、カナダが主導権を発揮し、不可能と思われていた条約締結を可能にした。このように「大国」ではないが、国際政治に影響を与えるパワーを持つ国家が「ミドルパワー」である。したがって、日本を「ミドルパワー」と言うことは、間違っても日本が「その他大勢」の国家だということを意味しない。

著者は、憲法9条と日米安保という矛盾を抱えた(それは日本が大国を諦めたことを意味する)吉田路線がどのようにして生まれ、それから後の政権がどのようにして吉田路線に吸収されていったか(=吉田路線がどれだけ強固だったか)、その中でどう自主性を追求しようとしたかを丹念に記述する。

非常に優れた分析だと思う。著者の言うように、憲法が押し付けられたかどうかということに拘泥するのではなく、正しい現実認識に基づいた未来志向の外交論が活発になることを期待する。

唯一残念なのは、日米安保の交渉で、日本が憲法9条を捨てて再軍備化すべきだというアメリカの圧力に対し、吉田首相が憲法9条を守ろうとしたのはなぜか、書いてないことだ。恐らく日本社会の状況からいって無理だと踏んだのだろうが、アメリカに対する完全な軍事的従属を拒んだため、という解釈も成り立つ。吉田路線を読み解く上で非常に重要なので、画竜点睛を欠く感がする。とはいえ、この本の素晴らしさが大きく損なわれるわけではない。

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8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By bons VINE™ メンバー
形式:新書
筆者は戦後の日本外交を、大国外交と理想的平和主義の中庸に位置する「ミドルパワー」外交として捉え直すことで、その実態と将来の日本外交の方針を探ろうとしている。

まえがきと序論なかで、「ミドルパワー」を、軍事力を最終的な拠り所とする「大国」による権力政治の舞台ではなく、「大国」が規定する国際システムを所与としそれ以外の領域(多国間協力など)に外交資源をつぎこんで影響力を発揮する外交だと、定義している。

本書の構成は、戦後日本外交は「ミドルパワー」外交だったという前提に基づき、吉田路線の誕生からそれが定着されていく日本外交史を冷戦後まで追っている。軍国主義を封じ込めるためにつくられた憲法9条と、冷戦の産物としてできた日米安全保障条約という、異なる環境で生まれた二つの日本外交の基本方針が矛盾の関係にあったことがねじれを生み出したが、それが日本の「ミドルパワー」外交の端緒となった。その後、日本外交は左右に揺れながらも、基本的にこの路線が踏襲されてきたのである。筆者はこの中庸の政策を歓迎し、冷戦後の世界においては、人間の安全保障の分野などでカナダやオーストラリアなどと協力していくことが、日本の「ミドルパワー」外交を最大限発揮できると論じている。

論理が明快であり、歴史の実証もしっかりした枠組みのもとに行われている。今後の展望についても、現実的かつ示唆的で説得力があった。

ただ、「ミドルパワー」外交という概念の精緻化作業がほとんど手つかずになっているのが惜しまれる。新書ということで紙幅の都合もあったのだろうが、「ミドルパワー」外交が大国政治のなかでその役割を発揮できる領域の限界性や、国際システムが日本にとって不都合なルールで形成された場合などの危機的状況における「ミドルパワー」外交の意味といった点まで、論じてほしかった。また、通商ルールの既定やAPECなどの地域統合を推進している日本の経済面における大国「的」な外交は、「ミドルパワー」外交の理論の射程内に収まるのだろうか?あとがきに「ミドルパワー」ということばが人々の思考を停止させてしまったと書いてあったが、筆者自身も思考を停止させることのないよう、さらなる理論展開を待ちたい。
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