筆者の論理は、『ものぐさ精神分析』で、史的唯幻論を試みて以来一貫しています。そのため、これまでと同じようなことも述べられていますが、日米関係についてこのようにまとめられたことは意味があると思います。
保守派の中でも親米と反米に分かれ、憲法第九条を改正することが、日本の真の独立につながるのか、あるいはアメリカの軍事的戦略に組み込まれることになるのかの議論が行われています。岸田氏は、この本の中では、憲法改正を支持するかのような書き方をしていますが、現時点ではそれをするのは反対だという意見のようです。いずれにしても、日米関係を考える人には、ぜひこの本を読んでもらいたいと思います。もちろん、アメリカの方は、英訳“Place For Apology: War, Guilt, And U.s.-japan Relations”を!
ところで、「あとがき」に、史的唯幻論を発展させ、世界の歴史を論じてみたいという野望を抱くようになったと書かれています。その野望の一部は、『一神教vs多神教』や『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』で果たされています。これらの本では、国家や民族の歴史を、個人と同じように精神分析することが行われています。それが可能である理由が、この本の『補論』に、「個人の分析と集団の分析」と題してまとめられています。
それは、集合無意識というような、神秘的なものを仮定するのではなく、「記憶とは、現在、手持ちの資料にもとづく、過去についての最善の推測である」と考えることで可能になるのだといいます。過去は現在に無数の痕跡を残しており、それらを無理なく自然に解釈すれば、記憶が再構築されるのだといいます。ここは、基礎となるところで、大きなポイントだと思います。この本の英訳はあまり売れなかったそうですが、この部分の説得力がもっと必要だったのではないでしょうか。