素晴らしいタイトルである。
著者は
ソビエト帝国の崩壊を学術的に予言したことで知られるが、その経歴を見た時、人文・社会科学に多少の学がある者ならば、震撼する。「世紀の大天才」の指摘だからこそ、タイトルには説得力がある。
政治の迷走と社会の閉塞の根本原因は、日本人の近代国家に対する無理解にあると評者は考える。一人で昼食を取る総理大臣(政治主導の迷走=官僚の使い方についての無理解)、大企業は派遣雇用を内部留保で維持せよとのたまう学者(フローとストックの区別もできない=経済に対する無理解)、大事故を起こした企業の社長に「裁判で真実を語って」とのたまうキャスター(刑事と民事の違いも認識できない=デモクラシー裁判に対する無理解)…、嗚呼馬鹿ばっかでホントに情けない!!さらに問題なのは、著者も再三述べているように、理解していないことすら理解していないということである。学校では教えてくれないが、以下の質問に答えられないこの国のリーダー達は、本書で勉強するべきである。
Q1.自由主義と民主主義の違いは? (第一章)
Q2.政治家と官僚の役割分担は? (第二章)
Q3.裁判官は、検事・被告どちらの味方か?(第六章)
本書は『
田中角栄の遺言―官僚栄えて国滅ぶ』の復刊であるが、生前、著者は「日本国民に、理解できるのかなあ!」と仰ったそうである(巻末の編集部コメントより)。本書は難解である。本当に理解しているのか、常に自問し続けながら読み進めなければならない。一方で、首をひねった点がいくつかあったのも事実である。「政治責任は刑事責任とは違う」(40p)「金権政治はデモクラシーのコスト」(第三章)と言いながら、角栄裁判報道に関しては「行政権力から人民を守るのが司法権力」という原則論を繰り返すのみ。或いは、「民主主義の要諦は、議会における自由討議にある」(第一章)のは正しいとして、この古代ギリシャ的理想が実効性を持つには、国会の定員も選挙民の数も大きすぎる。解決策は本書にはない。二重の意味で難解であり、ゆえにこの国のリーダー層が読むべき本である。