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30歳になる無職の男が、日曜日ごとに部屋を訪れていた恋人のことを思い出す「日曜日のエレベーター」。泥棒に侵入されたという友人の話を聞いた独り暮らしの女性が、まるで自分の身に降りかかったことのように恐怖を感じ始める「日曜日の被害者」。恋人の暴力に耐えかねたOLが、やがて自立支援センターに足を運ぶまでを描いた「日曜日たち」。都会で倦(う)み疲れた主人公たちの物語には、共通した気だるさが漂っている。そんな主人公たちの人生が、少しだけ重なりあい、交差していく。
その楔(くさび)となっているのが、彼らの過去に必ず登場するミステリアスな幼い兄弟である。「日曜日の新郎たち」の健吾は、家出してきた兄弟に寿司をおごってやり、「日曜日の運勢」の田端は、母親の住むアパートまで兄弟を送り届ける。兄弟とのささやかなふれあいが積み重なることで、閉塞した日常に、ほんのりと希望の光が差し込む。5編すべてを読み終えた後には、大切な人の死や、理不尽な暴力を受け入れながらも、「嫌なことばっかりだったわけではない」と言い切ることのできる、前向きでタフな若者たちが姿を現しているのである。(中島正敏) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
生きているってのは、それだけで憂鬱だ,
レビュー対象商品: 日曜日たち (講談社文庫) (文庫)
5人のまったく関係のない人たちのもとに訪れた幼い兄弟関係のない人たち同士の、ほんの少しの関係 けだるくぼんやりとした日曜日の夕方 明日からの平日・日常に押しつぶされそうな憂鬱 生きていく、生きているってのは、それだけで憂鬱だって気分になりました 最後の1篇だけは何か救いというか、希望というか 大変にすばらしい作品と思います でも精神状態によっては疲れると思います
10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
素敵な一冊だと思った。,
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レビュー対象商品: 日曜日たち (講談社文庫) (文庫)
狭い了見なのだけれど、「寂しくない奴は本なんか読まないんだ。」と思っている。そんな読者には、吉田修一は時々心に沁みる。 作り過ぎているところがある。パーツとエピソードがきっちり収まり過ぎているところがある。そんな欠点がとても惜しい。やり過ぎなきゃいいのに、と思ったりもする。 登場人物たちは、社会の底辺部に近い場所にいる。だらしがなくて、どうしようもない。でも、結構賢かったりする。その辺も少しだけ嘘臭い。だらしが無い奴は、嘘つきで卑怯で、どこまでも取るところが無い。その方が圧倒的に多いはずなのに、ここにいる連中は、みんなだらしないはずなのに、たくましく、どこか誠実で、頭がいい。嘘だよ、と思ったりする。 でも、社会の安定と王道と主流にいなくて、すっかりだらしなくても、誠実な人も、賢い人も、素敵な人もいる。素敵な人・・・・うん、吉田修一は、弱いけれど素敵な人、弱かったはずなのに、何だかその人の一部を信じて身を寄せたくなるような、そんな人を描いてくれる。そこが魅力なのかな。 縦軸と横軸。連作短編にそんな趣向を凝らすというのは、発想はしやすい。でも、実際に行われたものはほとんど無い。でも、この短編集は、それをやってくれた。無茶苦茶響いてくるってものでもない。正直、思い付きだけで、物語に取ってつけたような、単純な物語にそんな安直な手法で色を付けたような、そんな感じすらしながら読み進む。 でも、最終話「日曜日たち」は、僕には圧巻だった。主すじの物語も見事に書けていたし、各話を横に結ぶ横糸も、ここで見事に結ばれた。金も持たず都会をさまよう幼い兄弟がこの数日間、何を食べていたのかと尋ねられて答える場面がある。彼らは、「(兄が万引きした)パンと、たこ焼きと、すし。」と答える。変な取り合わせだ。聞いた瞬間、あり得ないとすら思う。でも、そこには真実がある。真実しかない。真実は、「飢えた兄弟は盗んだパンしか食えない」という答えしか与えないわけじゃない。でも、みんな、そんな答えがあることを思わない。 登場人物たちは、みんなしぶとい。すごく悲しいくせに、しぶとい。それに心打たれるのだろうな。「嫌なことばっかりでもなかったと思う。」というつぶやきは見事だ。青空を見ながら堂々と言うのではなく、寂しさの塊の中に包まれつつ、でも、正直にそうつぶやける。それでいいのだなと、思わせられる。読み終わって、素敵な一冊だと思った。いい作家だと思う。
18 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
心理描写が秀逸の連作短篇集,
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レビュー対象商品: 日曜日たち (講談社文庫) (文庫)
東京で暮らす若者のある日曜日に起こった出来事を描いた5篇を収録した短編集。それぞれの登場人物は互いにまったくの接点を持たないのだが、ただある一つの共通した逸話を持っている。 それは数年前、わけありそうな幼い兄弟に出会った逸話である。 実はこれがこの作品のキモで、読み通したときに5篇のほかにもうひとつの物語が浮びあがってくるような錯角を起こす。 それは、見つめ合う2人の横顔の絵の中に壷が見えてくるという『ルビンの壷』のようで、巧妙な構成のなせる業である。 登場人物たちの気持ちが丁寧に描かれたどの作品も好感を抱かせるのだが、互いに拭い去れない喪失感を抱える父と息子が心を通わせる『日曜日の新郎たち』がとくに感慨深かった。
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