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たとえばここに載ってある「大はし夕立ち少女」。12歳の女の子がお店のお使いに出かけた先で夕立に合う。すると風采のいい大人の男が傘をさしかけてくれる。少しどきどきするが、そのまま別れる。ーーなんのことはない。情景を切り取ったような小品である。けれどもそこには初潮を迎えたばかり、けれどもまだ大人にはなりきれない少女としての「色」(色香ではない)が描かれていて秀逸。本当は「雪の比丘尼橋」が一番好きなのだが、解説の杉本章子さんが私のいいたいことを語り尽くしているのでそちらを読んでいただきたい。
著者によると、前者は、著者があらすじを編集者に渡し、それにふさわしい絵をさがしてもらったとのこと。
文藝春秋誌の同じ企画で、辻邦生は「十二の肖像画による十二の物語」および「十二の風景画への十二の旅 」を創っているが、辻の場合は先に絵があったと聞いている。どちらが先でもよいが、いずれも美しい傑作を私たちに残してくれた。辻の作品には絵がついていたが藤沢のそれは文庫になったせいか、絵がないのが寂しい。初出誌、全集、単行本を私は見る機会を得ていないが、絵の入ったものを見てみたい気もする。しかし、藤沢作品からは、リアルなおんな絵姿が瞼に浮かんでくるから、絵のない絵本としで読むのもまたひとつの楽しみでもある。
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