金融経済小説の大家と言える著者が新境地に踏み込んだ力作です。
舞台は銀行ではなく、主人公は退職後に物書き転じた中年男性。
どこか著者と似た環境の主人公の元にかつての後輩と名乗る女性からメールが届きます。
その出会いをきっかけに少しずつ崩れていく平凡な生活。
衝撃的な性描写もさることながら、主人公を惑わす2人の女性を中心に展開されていく
ミステリー小説とも言える展開はものすごく読みごたえがあります。
ストーリーのキーワードとも言える『ミッドライフクライシス』は
誰にでもいつか訪れる危機であることを暗示しながら、
リストラやニートなど社会問題に対する警鐘も含めて綴られていきます。
辛く苦しい中でも、ただひたすら家族の為、会社の為、そして信念の為に生き、
自らを省みることすら許されないような激動の社会を走りぬいてきた中高年層に、訪れる挫折や失望。
過去の清算とは、過去の出来事をやり直すことではなく、
過去に抱いた失敗や忘れたいような経験すらも、
自らの胸にしっかりと抱いて責任をもって歩き続けることだと気づかされます。
定年間近の方だけではなく、世の中の男性にぜひ一読してもらいたい作品です。