御存じ聖徳太子の半生を少女漫画化して表した、日本の少女漫画における名作の一つ。
歴史的史実に忠実に基づいている物の、70年代からこの時代流行の作品「パタリロ」同様の美少年同性愛物の要素を取り入れてもいるので、
読む人によっては嫌悪感があると思います。
幼少の頃から秀でた頭脳を持ち、申し分ない家柄、神道を国教としていた古い日本を隋(当時の中国)の様に少しでも発展させようと仏教を導入する等、新しい思想や文化を取り入れる事で革新的に日本と言う国の発展に尽くした事でも有名です。
しかし、この厩戸皇子はこの作品の中では秀でた頭脳と並みの女以上の絶世の美貌を持つと共に、人とは違う超能力を持つ設定で、
その傑出した能力と子供らしくない非凡な栴檀の双葉的頭脳すらも、最も愛を乞う相手である母親から徹底的に忌避され、
寡婦であり凡庸な女である母親は、同じく凡庸で子供らしく手に負える出目皇子(くめのおうじ)を溺愛します。
群を抜いた知識と能力から、非常に若い頃から様々な国の重鎮的人物に取り囲まれ名声を得ますが、常に「大勢の中の孤独」を味わう中で
蘇我入鹿の息子・毛人に出会い、結束の固い同性愛的恋愛関係を中心に様々な人物と歴史的事件が登場し話は展開します。
兎に角、お涼様は、主人公・厩戸皇子を非常に怜悧なマキャベリスト的な性格に描いており、
常に子供らしさに欠如した何処か物事を冷めた目線で、良く言えば俯瞰で見る事が出来る人物であり、
挙句の果ては、人の心までも読める事から、作品の中では人が表側で見せる姿とは異なる、人間の裏側を
祭事(政治)を舞台にした陰謀渦巻く世界に住まう私利私欲に満ちた魑魅魍魎達の行動とあさましさを人間の暗黒面として描いており、
そこから、その特殊な予知的能力で先々を見越した行動がとれる人物として強調している気がします。
また、境界性パーソナリティ的な感情の移り気で脆く、感情的起伏の激しい部分や、毛人への執着的依存心と他者(主に女性)への憎悪的嫉妬心の描き方は山岸ワールドならではの読み応えで、
厩戸皇子は、権力を得る事と反比例して愛も人も遠ざかり、「孤高の人」として益々孤独にあえぎ、冷酷無比な氷の様な心を胸に秘めますが、
依存的に愛する者が何某かの形で奪われる時の慟哭と苦悩、其れに抗いつつも、権力者故に人前では平静を装う際の心の葛藤や
特殊な能力を持つが故に常に「人とは違う」と言う事で苦悩し、そこから起因する己では対処不可能と思える絶望的な孤独も上手く描いています。
当時の少女漫画としては非常に画期的な、愛を乞う若き権力者の苦悩と疎外感による絶望的な孤独が絶妙に描かれており、
これが当時の思春期〜青年期の女性にとってはある種、自分と重ね合わせる程の共感を得た事も、この作品の人気の秘訣だったと思います。
この作品の最後に、池に溺れた子が出てきます。少し悲しい結末ですが、
己の脚で立ち、自分を救うのは自分一人だが、人は一人で生きていけない事を読者に悟らせている様な気がします。
そんな、聖徳太子が今の国の有り様と、日没する処の国に「日出る国」を売ろうとしている●沢を見てどう思うでしょうか?
日出る国の神風と仏教と共に来日した猫のパンチが●沢に蹉跌を食らわしてくれるでしょうか?