とにかく厩戸王子の存在感が圧倒的です。強烈な美貌、ぞっとするほどの冷酷さ、恐ろしいまでに切れる頭脳、それでいてどこか寂しげな面影と時折見せる子どものような無邪気さ。全7巻を一気に読み終わり、走馬灯のように脳裏に思い浮かぶのは厩戸王子の姿ばかりです。冷たく恐ろしい人であるにもかかわらず、どうしようもなく魅せられてしまうのです。愛されていないと知りつつも、彼を思い切ることができない彼の妃たちの気持ちも、痛ましいまでにわかります。
大王の御子という高貴な血と美貌を誇り、幼少の頃より神童と名高い厩戸王子。一見、何もかもに恵まれているような彼が、なぜ道ならぬ恋にあれほど苦しまなければならなかったのか。あの気位の高い王子をこんなにズタズタに引き裂くなんて!と読みながら毛人(えみし)に殺意を抱いたのは私だけではないはず。「わからぬのか…」。あんな哀しい涙を見たくはなかったです。
「じぶんでじぶんを救うことができないものの所に現れる。それが仏」。神は祟る、仏は救う。弱冠20才そこそこの若さで大王の摂政として政治の実権を握った厩戸王子。物語はここで終わる。これから先、彼はどのように生きていくのだろうか。言い知れぬ孤独を抱え、たった一人で…