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村上氏には、物事を形而上的というか少し思想的に見る傾向があるような気がするのだけど、本書も例によって、「工場」の「工場性=工場の本質」を説く、「春樹流工場論」の様相を呈していて、ああ、やっぱりこの本はこの人にしか書けないだろうな、という気にさせます。
特に、結婚式場を「工場」としてカテゴライズし取材した「工場としての結婚式場」の章は秀逸で、工場見学=社会科見学が一転、資本主義社会批判に昇華されるような凄みがあります。(そういえば、村上氏の小説でも、高度資本主義社会は結構槍玉に挙げられていますよね。)
ただの工場紹介本で終わらず、各種工場がどのような象徴的悲しみを抱えているのか、そして、職人がどれほど職人的な仕事をしているのか、といった部分に深みがあって面白いと思います。
ある種の本が読後、食欲を誘うように、この本を読み終わったとき、工場見学をしたくなりました。
そういう本って、なかなかないですよね。
え~と、つまり、そういう本なのです。
書かれた時期が80年代後半で経済環境も世相も変わっており、今からするとやや古くエッセイの内容としては旬を外れた、という感じはする。文章のタッチも最近の村上春樹とやや印象が異なる(こちらのほうが饒舌)。
印象的なところでは、小岩井牧場の章の、「工場としての牧場」、「経済動物としての牛」を描いた部分。これは今読んでも新鮮。
全体からすると、村上ファンとしては読んでもよいかな、という感じかな・・・
アデランスのかつら工場の話もあるが、「ねじまき鳥クロニクル」で笠原メイがかつら会社のバ!イトをするというエピソードはここで取材した内容によるのかしら、なんか思えてしまう。
氏も同じことを本文中で書いているが、小学生時代に行った
あの工場見学の雰囲気で大人がいろんな(もしかしたらマイナーな分野といわれるかもしれない)工場を取材したルポと言ったところである。
堅苦しくない雰囲気で堅苦しそうな「工場」と「工場で働く人たち」の
お話を読める、そんな本である。
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