収録された「写真・地図・戦場図」は180点以上! その中でも「西安事件から生還した蒋介石を祝う行進(先頭に蒋の巨大な肖像画)」「上海事変の契機となった大山勇夫中尉の遺体搬送」「最後の支那派遣軍総司令官となった岡村寧次大将」など、迫力ある貴重な写真が数多く含まれています。
また地図関連も、冒頭の「中国全土図(これが無いと話にならない)」から「終戦直前の日本軍による占領地域」など手堅く押さえられています。
特に日中戦争が起こる原因となった日本の『北支分治工作』について「これでもか!」と言わんばかりに、地図を多用し噛み砕いて説明している部分は特筆に価します。これだけでも本書を推薦する理由となるでしょう。対象となった河北省・山西省・山東省・綏遠省・チャハル省の5省は「見開き2ページ」の詳細な地図が載っています。
また「南京市街略図」は、戦史叢書でよく目にするような無機質な地図ではなく、イラストに近いイメージで表現された珍しい地図です。絵は稚拙かもしれませんが、政府機関の位置などが非常に分かり易く「目からウロコ」で一見の価値ありです。ただし、肝心の南京事件については諸見解を挙げるだけですから、左右派ともに期待しない方が良いでしょう。
さらに「徐州作戦」や「武漢攻略戦」「重慶爆撃」「洛陽攻略戦」「江南殲滅作戦」「長沙作戦」などの戦場図も少なからず収録しており、日中戦争というデリケートな、ともすれば感情的になりがちな議論に「合理的な視点」を与えています。言葉を100万語費やすよりも、戦場図を見た方が理解が早いという事がある訳です。
以上、ビジュアル面ばかり述べてきましたが、個人的には『大陸打通作戦』に1章を割いている点が好ポイントです。史観として左傾向が強いのが難点ですが、これだけ日中戦争が分かれば、入門書として「ほぼ最良」の出来でしょう。