共著ではあるが、大学院での担当教授の著作であるので読む。
まずもって面白いのは共著の林思雲氏が本書を執筆した動機づけが興味深い。氏はNHKの「放送スペシャル」における日中戦争の取り扱いについて、日本の主戦派のみにスポットライトを当てている点を「傲慢」と評している。つまり、日本と中国の戦争が拡大するも縮小するも主導権を日本側が握っていたような描き方を批判しているのである。それと同時に、中国側における銃後の沸騰した状況を見落としている点を指摘してい事も面白い。
両者共に日中戦争を「侵略戦争」と捉えているが、それに捕らわれた感情的な文章になる事を避けて、日中戦争の最中におけるドイツと中国国民党の微妙な関係、中国の都市部と農村部の温度差、日中双方の和戦両様の複雑な外交交渉とそこに介入するアメリカの影響等々を教科書的なものよりも、やや目新しいものを描いているのは興味深い。
特に、戦時中の中国人民を一くくりにせずに都市部(富裕層)と農村部(貧民層)に分けて詳細に言及している点は面白い。こう言及されれば、共産党がどうして勢力を伸ばしたか判りやすい。
章ごとに執筆者が変えて、微妙に書き方の趣向を変えているので飽きずスラスラと読めるのは嬉しい。