著者は長年、第一線の研究者として活躍してきた、深い学識を持つ学者である。
本書は、その著者による日中戦争の総決算的著書である。
そう著者も書いているし、その熱意は十分伝わってくる。
しかし、本書は解りづらい。
そもそも日中戦争はあらゆる要素の詰まった大変複雑な社会的事象であった。
著者はそれを政治面・軍事面、そして従来の日本の著書において非常に弱い
第三国関係を含む外交関係について、余すところなく述べようとする。
新書では無理がきて当然だ。
というのも、日中が置かれた状況のみならず関係各国の歴史知識がなければ
この錯綜した糸をたどることが出来ないからである。
逆に言えば、その辺りの知識があれば、この本は最高に面白い。
欲を言えば、標準サイズの新書に詰め込んだために記述が足りないのかな
と思われる部分が散見されるのが惜しい。同じ中公新書の『日中十五年戦争史』
『キメラ』のように、思い切ってページを増やしたほうが良かったかも知れない。
旧版では時系列に沿った記述がなされていたが、本書では特定の問題について
まとめて記述するという形になっている。
この意味でも、初めて日中戦争史を読む人には旧版の方が良い。
新版はあくまで突っこんだ解説書。
入門書としては敷居が高いし、表面をなぞっただけの歴史的知識程度では、
解りづらい箇所が多いと断っておきたい。